ドルトムンドの香川が好調だ。ドルトムンドの選手が並ぶと、170cmの小柄な体躯は頭一つ分だけ低い。この小さな日本人プレーヤーがBudesligaのトップを走るボルシア・ドルトムンドを牽引している。今年に入ってから、週間ベストイレヴンに何度も選出され、欧州ベストイレヴンにも顔を出した。日本での代表戦を終えてすぐの第24節のマインツ戦では決勝点を決めて、「ドルトムンド優勝を決めるゴール」という評価を得て、週間MVPにも選ばれた。まだリーグ終了まで10試合も残しているが、この節で2位のバイエルン・ミュンヘンと3位のミュンヘングラッドバッハがともに敗れたから、この節の勝利は大きかった。しかも、圧倒的に攻めながらチャンスを決められず、逆に同点にされた直後のゴールだったから、値千金のゴールだった。
ドルトムンドの選手は若いから、90分間を通してよく走る。このチームで目立った仕事をして、さらに欧州のトップチームへ移籍したいと野望をもつ選手ばかりだから、ゴールへの執念が凄い。そういう激しい競争の中で、香川はチームに欠かせない主役の座にいる。
香川の特徴はボールの処理が速く、一瞬でチャンスを作るパスが出せることだ。他の選手は自分でゴールしたいという意識が強いから、どうしても球を持ちすぎる。ところが、香川はワンタッチでキラーパスをだす。この瞬間的な判断と位置取りが他の選手に比べて格段に優れている。ポーランドのFWレヴァンドフスキーとのトゥートップ気味でゲームに入り、その後にトップ下に位置し、二列目の左右を動きながらボールを処理する。真骨頂はペナルティーエリア内に入った時だ。いつの間にか素早くゴール間に顔を出す。また、ドリブルで横に移動しながら相手DFを交わしていく姿はメッスィに似ている。マインツ戦では何度かゴールチャンスを外したが、最後はゴール前に入ったグラウンダーをワンステップで決めた。
8万人を超えるドイツの大観衆の中で主役を演じる日本選手がいるなど信じられない。それも35万ユーロの端金で獲得したのだから、チーム経営者には笑いが止まらない。
これにたいして、膝を痛めた本田は移籍に苦労している。今冬の移籍市場で最後までイタリアの名門ラツィオが交渉していたが、まとまらなかった。モスクワCSKAは本田の移籍金1000万ユーロに、年俸300万ユーロの2年分を足した1600万ユーロを譲らなかった。ラツィオの提示額との300万ユーロの差が、最後まで埋まらなかった。ラィツオは本田の怪我を当てにして値切れると考え、他方でCSKAは原価を割る取引を拒否した。本田には厳寒のモスクワより温かいイタリアが良いに決まっている。膝の調子が今一つだから、何としてもモスクワを出たいだろう。
久しぶりにスキージャンプが面白くなった。10年前は日本人選手が上位を占め楽しめたが、ここ4~5年はオーストリアの若手選手が圧倒的な強さを発揮し、トップテンに6人も7人も顔を並べる試合ばかりで、見る気もしなくなっていた。それでも、ジャンプ選手が1人しかいないスイスのアマンに、オーストリアはオリンピックで苦杯している。史上最強のオーストリアチームが、ノーマルヒルでもラージヒルでも、金メダルがとれない。ドイツのハンナヴァルトが絶好調で五輪を迎えた時も、アマンが立ちふさがった。だから、勝負事は面白い。
この冬のシーズンで選手動向が大きく変化した。オーストリアの選手が連戦連勝とは行かなくなった。伊東大貴が4勝し総合でも4位に入ったように、ノルウェイ、ポーランド、スロベニアの選手が優勝するなど混戦の時代に移りつつある。距離や飛型点に加えて、風の強さを加味する評価方法に変わったことも影響しているかもしれないが、混戦の方が観る方には面白い。女子のジャンプで15歳の高梨沙羅が活躍しているのも頼もしいが、如何せん日本のジャンプの競技人口が少なくて、上位に続く選手がいない。ただ、それはオーストリアを除いて、他の国も同じようだ。誰もが簡単にできるスポーツではない。子供の時に習得できなければ、競技選手になることが不可能なスポーツだから、各国とも選手層の薄さや世代交代に悩んでいる。
プロテニス界も長かったフェデラー時代が終わり、ジョコヴィッチ、ナダル、フェデラー、マレーの四強が競う時代になった。今年の全豪オープン決勝は6時間近い激戦になったが、最終的にジョコヴィッチがナダルを下した。対ナダル戦7連勝と相性が良い。他方、フェデラーはナダルを苦手にしている。室内の速いコートなら良いが、土のコートでは勝てない。フェデラーの片手バックハンドを狙って、高く跳ね上がるスピンボールを集める作戦をとられるから、土のコートではどうしても勝てない。ウィンブルドンでも芝が揃っている時に対戦できればフェデラーは勝てるが、芝がすり切れて土がむき出しになると、もうナダルに勝てない。
このように、サーフェイスによって、勝負はかなり左右される。その意味で残念だったのが、デ杯の対クロアチア戦の惜敗だ。アジアの強敵インドを下して、久しぶりにワールド・グループに入った日本。しかも、錦織だけでなく、添田豪、杉田祐一、伊藤竜馬が急成長して、世界ランクを上げてのワールド・グループ入りである。しかし、208cmの巨人カーロヴィッチ一人に負けてしまった。全豪でベストエイトまで入り、トップ20に入った錦織でも、室内の速いコートでは最初から分が悪かった。230kmのサービスが好調だと、フェデラーやナダルでも簡単に勝てない。明らかに、サーフェイスの選択を誤った。テニス協会は土のコートを用意すべきだった。スペインチームは冬でも、得意の土の室内コートで相手を迎える。
1995年にハンガリーがワールド・グループ・プレーオフで強豪のオーストラリアと対戦した時のことだ。世界ランクで圧倒的に上位にあるオーストラリアにたいして、急造の柔らかい土のコートを準備して迎え撃った。当時、ダブルスの世界ナンバーワンを抱えていたオーストラリアを3対2で破るという番狂わせを演じた。これほどまでにサーフィスは大きな意味をもっている。
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