2008年の秋、長女を通わせたいと考えていたみどりの丘日本語補習校へ授業を見学に行きました。見学させてもらったのは、当時2年生のクラスでした。補習校といっても、ぼんやりとしたイメ−ジしかありませんでしたが、実際見学してみたら、まだ1年半しか通ってない子供たちが、ひらがなどころでなく、先生が言ったことをノートにかいたり、漢字を書いたりしていることに驚かされました。あいうえおの「あ」の字もかけない娘が、ここへ通えば1年半でこんなことができるようになるのかしら?!と、やはり通わせたいと改めて思いました。

 そしていよいよ2009年4月、娘はみどりの丘日本語補習校へ入学しました。同級生は幸運なことに8人もいて、しかもそのほとんどが小さい頃からよく一緒に遊んでいた、もしくは知っている子供たちでした。そんなこともあり、クラスに慣れるのは時間がかかりませんでしたが、宿題をこなすのが最初の1ヶ月から大変でした。なにしろ、当たり前ですが書くのも読むのもものすごく時間がかかり、今おもえばかわいそうなことに、イライラしたり、きつい言葉を言ったこともありました。そして、ひらがなってバランスをとるのが難しい字なんだなぁ、ということも改めて気づかされました。そうこうしながらも、昼食後幼稚園から帰ってきたら、毎日宿題を一緒にしました。

 
 

 8月には夏の大イベント、宿泊学習がありました。クラスの友達も一緒といえども、あまりよく知らないほかの学年のお兄さんお姉さんや、先生方とだけのお泊り会。夜、先生から、「泣いているので、お迎えに来てください」と電話がくるかも、と覚悟していました。そんな私の予想に反してとても楽しい2日だった様で、迎えに行ったときは、帰りたくないと不機嫌でした。帰りの車の中では、みんなで一緒にカレーをつくりとてもおいしかったこと、宝さがしをしたこと、同じ部屋の友達が夜なきだしたので、なぐさめてあげたことなど、いろいろ話してくれました。

 そして9月、ハンガリーの小学校への入学。今までは幼稚園から帰ってきたら、毎日数十分でも日本語の勉強をすることができたのに、週に2〜3回時間がとれるかどうかになりました。特にまだ学校に慣れないうちは、夕方帰ってきたらとても疲れていて、日本語も勉強しよう、という状態ではありませんでした。疲れていても日本語の宿題をしなくてはいけない娘をかわいそうに思ったり、宿題をイヤイヤやっているのを見ているのが親として嫌になったり、両立は難しいのかな、と思った時期もありました。でも、宿題をするのは好きじゃないけれど、先生が大好きだし、友達と会うのも楽しみだから通いたい、という娘と、大変でも補習校へ通って勉強することはとても大切、というハンガリー人の夫と一緒に乗り越えました。

 そして先月行われた学習発表会。毎年一度、一年間の成果を発表する会です。一年生は「さるかに合戦」の劇をしました。人前で演技をすることも初めての上、いろいろなセリフを覚えて言えるのだろうか、と不安でしたが、限られた練習時間にもかかわらず、とてもかわいらしい素敵な劇を披露してくれました。他の学年のお兄さんお姉さんの発表をみたこと、みんなで一緒に日本語の歌をうたったことも、とてもよい経験になったと思います。親としても、ハンガリーの学校行事しかしらない娘が、自分が小学生だったころの学芸会のような雰囲気の会に参加しているのをほほえましく、うれしく見させてもらいました。日本語のわからない義理の両親、夫にも、子供たちの一生懸命さや先生方の熱心さ、観客の方々の温かいまなざしが印象に残ったようでした。

 こうやって振り返ってみると、あっという間の一年でしたが、楽しいことも大変なことも、いろいろあったなぁ、と思います。娘にとって、月曜日から金曜日までのハンガリー語での勉強プラス土曜日の補習校は、疲れることも多々あったとおもいます。ほかの子供たちは、「明日から2日間は何もしなくていい〜!」と喜んでいるのに、娘は土曜日も朝はやおきして補習校。家族も、土曜日は補習校だから何も予定をいれられません。片道車で30分の送り迎えもあります。それでも一年間続けてこられたのは、グル−プで勉強する楽しさ、熱心で温かい先生の力があってのことだと思います。そして何より娘や同級生の成長に驚かされます。ほんの一年前は、日本語でなにも書けなかったのに、今ではひらがな、カタカナ、漢字も7〜80字書くことができます。補習校へ通わず、娘と一対一での勉強では、とても無理だったと思います。自分と同じ環境の子供たちがいること、ハンガリー語と日本語だけでなく、他の言葉を話す子供もいること、そのような同級生と一緒に勉強し、ふれあうことで、娘の視野もこれからもっともっと広がることでしょう。これからも、ハンガリーの学校との両立が大変になることもあるかと思いますが、大好きな先生と友達と一緒に楽しく通ってほしいと願っています。