9月の声を聞くとやはり「秋」を感じる今日この頃である。
秋の一日、妻の友人と共にブドウの果汁絞りを楽しんだ。
 名前は分からないが、我が家には一本の大きなブドウの樹がある。多分野生のブドウではないかというのが周りの意見だが−実は小さくて食用には適さないが、甘さは十分、例年驚くほど沢山の実をつける。絞って、ブドウジュースにするかそれを発酵させてワインにしてきた。
 ブドウを摘み、ブドウの実を花梗(かこう、実を付けている枝)から一粒ずつ外す。それを手で押しつぶして絞り機にかけ果汁を絞る。
 そのまま飲むのがハンガリー語ではムシュト=must。一日位置くと発酵が始まるが半分くらい発酵したのがムルチ=murciシュトラム。さらに発酵を進めて空気を断てばワインの出来上がり。
 ゲストが摘み取ったブドウは全部のブドウの三分の二。これから搾ったジュースは15リットルだった。真紅で甘美な自然の恵みに感謝、感謝。
 我が家の果物イベントは例年5月下旬に始まる。
 チェレスニエ(甘いサクランボ)が食べごろになるからだ。今年も5月24日に、しーちゃんとそのママ、しーちゃんの友達のエミちゃん、トーマ君とそのママが最初のゲストとして来宅、サクランボ摘みを一緒に楽しんだ。

 子供たちは初めての経験らしく、ルビー色の実を食べご機嫌。サクランボに飽きると木登りのほうが気に入りなかなか木から下りようとしなかった。
 サクランボは最早完熟していて、一時も早く収穫しなくてはならなかった。友人、知人に誘いをかけて来宅可能な人達に来てもらった。24日はしーちゃんとママのグループのなど11人、25日は6人、26日は6人のゲストがサクランボ摘みに来てくれ、ほとんど全ての実を摘み取ってくれた。
 日本人にとってサクランボは特別な果物のようだ。「サクランボをお腹いっぱい食べるのが長年の願い。今日はその夢がかないました」とゲストの一人はコメントしてくれた。
 6月下旬から7月上旬はメッジ=サワーチェリー=のシーズンとなる。
 約一ヶ月間、滞在していた日本からのゲスト・二組の夫妻が帰国して時間的な余裕が出来てようやくジャムつくりに専念できた。完熟した果物は待ったが効かない。時間との勝負だ。
 ジャムつくりで最初の作業はメッジ摘み。はしごでは届かない、高いところにある実は木によじ登って摘まなければならない。危険と隣り合わせの作業で一番骨が折れる。仕事となると忍耐と体力がいる作業だろう。
 10-20Kgのメッジを採ると、次の作業は種取り。一粒ずつ丁寧に根気よく種を取ってゆく。種取器はメイド イン ハンガリーもあるが性能はもうひとつ。我が家のものはスイスで見つけた使い易い器だ。ここまでの作業は男性の仕事。 
 種取のすんだメッジは取り残しの種のチェックも兼ねて、半分くらい押しつぶし、余分な果汁を搾り取る。そうすることによって果汁を固めるゼラチンなどの凝固材を使わずにすむ。中身の濃いジャムが出来る訳だ。搾り取った果汁は加熱すれば100%のジュース、そのままビンに保存しておけば、サクランボ酒になる。
 以上の作業は準備作業。最後は煮詰めの作業。メッジの重さの3分の1の砂糖を加え、煮詰めていく。凡そ3Kgのメッジに900グラムから1Kgの砂糖を使うのがわが家のジャム。甘さを抑え、メッジ本来の酸っぱさや風味を残すためだ。このとき大切なのはアク取り。丁寧に根気よくアクを取り続ける。煮詰める時間は約30分。沸騰したメッジの実からアクを取る作業は熱くて大変なもの。
 煮詰めたメッジは熱いうちにビンに詰める。ふたを下にして、毛布で保温しながら冷めるのを待つ。こうすることによって余分な空気抜きにもなるようだ。保存剤なしに1-2年は保つ。
 最後の作業はラベル張り。ラベルは妻が手書きで作ったもの。パソコンで作らずに手書きのラベルを使うのは、最初から最後まで手作りのジャムにこだわる所以である。
今年作業6月21日に開始して、7月7日まで。作ったジャムは400-500gのビンが約150本、それより大きなビンが50本だった。お疲れ様でした。
 メッジがすむと次の果物はブラックベリー、リングロー(スモモの一種)シルバ(プラム)と収穫期を迎えるのだが、今年は旅行期間と重なって大半を腐らせてしまった。
 残る果物はリンゴ。10月中旬には真っ赤なリンゴが楽しめるだろう。