消費増税を選挙の道具にする愚
盛田 常夫
選挙が近づくにつれ、安倍⾸相の親衛隊「経済学者」(アベノヨイショ)が、消費税引上げの断念を官邸に迫っている。もっとも、選挙で負けたくない官邸が、アベノヨイショを総動員して消費増税延期の「世論」を創り出そうとしているのかもしれない。しかし、消費税引上げは短期の景気の話ではない。将来社会を安定的に維持するための⻑期の政策問題である。 国家財政の⾚字は GDP の 10% |
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この過剰消費を担保しているのは、将来世代から徴収する税収である。税の前借りで現在の政府サーヴィスを賄っているのが、現在の⽇本である。しかも、その税の前借り額は現在の税収の 20 年分にもなる。ふつうの家計であれば、とうの昔に破産している。20 年分の年収を前借りしているのと同じことだからである。国家財政がすぐに破産しないのは国の経済規模が⼤きく、⺠間経済が⼤きな問題を抱えることなく、国⺠経済を⽀えているからである。 ヨーロッパでは財政⽀出の⽔準は⾼いが、その分税負担も重い。税負担なしに、⾼度の社会的サーヴィスが得られることはあり得ない。それは将来世代に借⾦を負わせるだけだからである。 |
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* Parking rate。標準税率への移行を緩和するために、12%と標準税率との間の税率を設定。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
幼稚な議論 1.政府の債務だけが⼤騒ぎされるが、政府資産で相殺すれば純債務は⼩さい。だから、⽇本には財政問題など存在しない(⾼橋洋⼀、森永卓郎) 2.「政府と⽇銀を統合政府で考えれば、債務と債権は帳消しにされる」ので、財政問題は存在しない(スティグリッツの誤解を真に受けた⾼橋洋⼀)。 3.GDP の過半以上を占める消費を抑制すれば、景気が後退することは⽬に⾒えている。だから、消費増税をやってはいけない(藤井聡ほか多数)。 4.国債が国内で消化されている限り、財政危機は起きない(炎上商法で講演料を稼いでいる三橋某)。 5.国債は国⺠の債権だから、「国⺠の借⾦」という主張は嘘である(ほぼすべての素⼈論議)。 何時の時代でも国⺠は政府が何とかしてくれるだろうと楽観している。この点で、右も左も⼤差ない。「⽇本の国家財政は破綻しない」のではなく、すでに破綻している。その理解の不⾜が安易な主張を⽣み出している。歴史が⽰していることは、右も左も無責任なことだ。誰も体制崩壊の責任を取らない。もっとも、そういう政治を⽀えてきたのが国⺠なのだから、最後は国⺠が責任をとるしか⽅法がないのだろう。次の選挙のことしか考えていない政治家に、将来の⽇本社会のあり⽅を求めても無駄なことだ。せめて、無責任なポピュリスト政策によって膨⼤な累積債務を積み上げてきた与党に責任を取らせなければ、再び原発事故 の尻拭いをさせられた⺠主党の⼆の舞になるだろう。 |