今年度、校舎がセント・アンゲーラ小学校に移転して初めての発表会となりましたが、会場の多目的教室はとてもアットホームな雰囲気で児童、生徒も落ち着いて発表することができました。
初めに運営委員長のごあいさつがありました。その中で発表する時には、「大きな声で、ゆっくり、はっきり」、そしてお友達の発表を聞くときには、「話している人を見て聞くこと」を児童生徒との約束として話していただきました。
トップバッターは小学一年生の「かずとかんじ、日づけとよう日」
4月に補習校に入学してからたくさんのひらがな、カタカナ、漢字を学んだ一年生。漢字には一つの字にいろいろな読み方があることをしりました。そこで教科書の中の単元で数え唱と日付と、曜日の唱の暗唱をしました。一年生にとっては、初めての学習発表会。期待と不安が混ざる中で全員がしっかりと元気な声で落ち着いて発表していました。
小学二年生は、「伝えよう、大好きなもの」
単元にある「大好きなもの、教えたい」から、大好きなことを発表しました。少しずつ書きたいことが自分でも書けるようになり、みんなにも伝えられるようになった二年生。ゲーム、雪、お家で飼っている犬、クリスマスにもらったおもちゃなど、絵に描いてその絵を見せながら、いつもらったものか、なぜ好きなのかなど全員に伝わりやすいよう工夫して発表していました。
小学三年生は、「三年とうげ」
朝鮮半島の民話で音読劇でした。「三年とうげでころぶでないぞ、三年とうげで転んだならば、三年きりしかいきられぬ。」といわれている峠で、おじいさんが転んでしまったので、さあ大変!そこにトルトリという若者が見舞いにやってきて、三年しか生きられないと嘆いて、寝込んでいるおじいさんに、「一回転んで三年生きられるのならば、二回転べば六年、三回転べば九年・・・・・」と助言をし、おじいさんは峠に行って、何度も転んで、転んで元気を取り戻すというお話です。
音読劇ですが動きもつけての発表で、おじいさんが何度も転ぶ場面は、会場も笑い声につつまれました。
小学四年生は、「ごんぎつね」
とても有名な新美南吉のこのお話。
いたずらぎつねのごんが、兵十の川でとったうなぎをいたずらで盗みます。その後、兵十の母親が病気で死んでしまい、それを聞きつけたごんは、自分がうなぎを盗んだから兵十の母親は、精をつけることができずに死んでしまったのだと思います。その日から毎日、山で採った木の実や、川で取った魚を兵十の家にそっと置いて罪を償います。しかし、そうとは知らない兵十は、ある日、自分の家の裏から食べ物を置いて出て行こうとするごんを見つけ、また悪さをしにきたのだと思い銃で撃ってしまいます。かけよって見て、兵十は初めて、ごんがやっていたことだと知り、後悔と悲しみにくれるというお話です。
四年生は劇での発表でした。衣装もしっかりと準備して、たくさん練習した様子が見て取れました。台詞のいいまわしも工夫している様子がわかり、深く読み込んでいるという印象でした。
小学五年生は、「あめ玉」
橋がない川の向こうに行くとき、渡し舟に乗ります。その舟の乗り場に乗客がやってきました。おかあさん、二人の小さい子供達の家族と、お侍さんが一人。子供達は舟の道中、お母さんの持っているあめ玉を食べたいとせがみますが、あめ玉は一つしかありません。そこで、お侍さんが自分の持っている刀であめ玉を二つに切ってくれました。川の向こうについてから、売っているあめをかってほしいと、子供たちはまたまたおかあさんにせがみますが、お母さんはお金がありません。そこで、さっきのお侍さんがあめを全部売り子から買って子供達に渡します。怖いと思っていたお侍さんだったけれど、とても優しくて粋な事をしてくれるというお話です。
小道具も準備して、台詞もしっかり覚えて、衣装も浴衣や袴を準備するなど工夫をしていました。台詞も全員しっかり覚えての挑戦でしたが、練習の成果が発揮できていました。
小学六年生、「柿山伏」
小学部最上級生の六年生は、なんと狂言。私は狂言と言っても日本のテレビで少し見たことがある程度なので、ほとんど何も知りません。なので、とても楽しみにしていました。
始めに、狂言とはどういったものか、「所作」といって笑う、泣く、などきまった表現方法があること、舞台での歩き方、話し方についてなどの説明がありました。非常にわかりやすく、さすが六年生、お客さんにしっかり伝わるように、構成も考えられているな.と感心しました。
「柿山伏」とは、畑の柿を勝手に食べてしまった山伏が、畑の主にこらしめられるお話です。柿の木に隠れた山伏、ですが畑の主はかくれていることがわかっているので、「木の上にいるのは、ありゃ、からすじゃ。からすだったら、鳴くので、鳴かぬならば弓で射てころしてやろう。」と山伏に振ります。山伏は、畑の主にばれていることを知らないので、必死にからすのまねをします。この調子で、かわいそうに山伏は、さる、そして鳶の真似をします。畑の主が山伏に「鳶だったら飛ぶものだが、お前は飛ばぬか。」と振り、山伏をのせるだけのせて、山伏は飛ばざるをえなくなり飛び降りてしまいます。最後は、「いたい.」となり、畑の主は「じゃあ、帰ろう」というオチ。
六年生は日本人でもあまり馴染みのない「狂言」をこの日のために動画で見たりして研究したのでしょう、とても表現豊かに演じていました。声の強弱や抑揚を、自分なりに考えて伝えようとしている姿を見て、さすがだな.と感じました。
中学一年生は、「落語」
小学六年生に引き続き日本の伝統芸能です。始めに落語のルーツや決まった表現方法などの簡単な説明がありました。演目は「ねずみ」と「反対車」の二つでした。中学生ともなると現地の学校も忙しくて大変な中、中学一年生の二人は、台本をほとんど覚えている様子でした。覚えるだけでも大変だったのではないでしょうか。でも中学生らしく、落ち着いてしっかりと声が出ていました。
中学三年生は、「様々な方言」
同じ日本語でも地方によって表現が様々な方言。中学三年生は、親戚や友人が住んでいる親しみのある地域の方言について調べ発表しました。
同じ関西でも大阪と神戸では違いがあったり、江戸弁、岐阜弁など私があまり馴染みのない地方の方言についても知ることができて大変興味深かったです。発表する際の、声の大きさ、舞台での振舞い方も補習校の最上級生らしく立派でした。クイズを取り入れ、会場のみんなが盛り上がり、要所要所で笑い声もあり、小学部の低学年などは、だんだん飽きてくるころなのに、その様子は全くなく非常に楽しんで発表を聞いていました。
最後は、全員での合唱「みんなの夢が叶う星」
この歌を補習校の合唱で歌うのは初めてだったので、一月から毎週練習してきました。音取りからの練習でしたが本番が一番、声も出ていて上手に歌うことができました。
全演目が終了後は、来賓のお客様、在ハンガリー日本国大使館参事官、高水様そして、ブダペスト日本人学校校長四ノ宮先生からご講評をいただきました。
私は今年度、小学一年生の担任でした。四月に入学した頃は、まだまだ幼く小さな一年生が、二月には立派に発表している姿に感動しました。
毎週の練習はとても楽しく、子供達も初めての発表会にわくわくしている様子で緊張などはあまり感じていないように見えました。
舞台リハーサルも普段の教室から場所が変わっただけで、なにかわくわくしている感じ。練習でも声は出ていたので発表については心配はしていませんでした。でも一つだけ不安だったのは、他の学年の発表を最後まで聞けるかなということでした。
しかし、そのような私の心配をよそに子供達は真剣に上級生の発表を聞いていました。その様子を見て、子供が子供同士でしっかりと学びあっているのだと、私自身、再確認することができました。そして、「学校」というのは、そういう場所であるということも。
子供達が出会うたくさんの「初めてのこと」、学習発表会もその中の一つです。その瞬間に立ち会えたことを大変嬉しく思います。
この日のために、協力してくださった運営委員の皆様、保護者の皆様、ご来賓くださった在ハンガリー日本国大使館参事官、高水様、ブダペスト日本人学校、校長四ノ宮先生、そして他の先生方に心よりお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
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