ハンガリーに留学して早4年、四度目の寒い冬を迎えました。留学当初は戸惑うことも多く、生活に慣れること、レッスンについていくことで精いっぱいだった毎日比べ、今ではここで音楽に没頭できることを心から幸せと思えるようになりました。
留学1年目はパートタイム生として、修士課程入学試験の準備期間として始まりました。留学前のソコライ・バラージュ先生との出会いが、ハンガリー留学の決め手となったので、その先生の元で勉強できる喜びはこの上ないものでした。厳しいレッスンに耐え、留学2年目には無事、修士課程で勉強できることとなりました。この2年間は毎日が時間との闘いでした。レッスンは週に1回から2回と増え、さらに室内楽のレッスン、いくつもの授業を取らなければなりません。練習時間が削られ、曲のペースは増す。年2回の実技試験に卒業試験。いかに効率良く、質のいい練習をするかが課題になりました。時間がないから曲を仕上げられないなどという甘えは許されず、こうした厳しい環境があったからこそ、強くなれたのだと思います。
そして修士課程2年目。卒業試験という大イベントが私を待っていました。兼ねてから卒業演奏で弾きたいと思っていた大曲を取り入れ、出来上がったプログラムは大変難しいものに・・・。結果的に、反省すべき点が多く残る卒業演奏会となりましたが、2年間修士課程で学んだことへの達成感を得られ、次へのステップにつながる大事な機会を与えていただけたと思います。私にとって留学最後の年となる今年、パートタイム生として勉強する毎日が続いています。修士課程の2年間は時間に追われ、さまざまなレッスンや授業から学ぶことが多かった半面、コンクールを受ける余裕や時間がなく、レパートリーもなかなか増やすことができませんでした。この最後の1年は、コンクールをできるだけたくさん受け、多くの曲をこなす「挑戦」の年です。
この4年間の留学生活で得た一番の財産は、恩師との出会いです。私は譜読みが大の苦手で、頭の回転も遅く先生の注意に瞬時に対応することもなかなかできません。そんな私に諦めることなく一生懸命指導してくださった先生方がいてくれたからこそ、今の私があるのだと思います。そして、音楽に対して決して妥協しない姿勢、すべての音を完璧にコントロールし、作品を建築のように作り上げていく構成力。音楽に欠かせない基本を私に叩き込み、また間近ですばらしい演奏を聴かせてくださった先生方に心から感謝しています。
留学当初に感じたさまざまな驚き、喜びは今でも変わりません。ハンガリーのアパートには防音設備がなく、苦情が出て苦い思いをしたこともあります。でも、ほとんどの住民の方々が、長時間の練習を温かく受け入れてくださっています。こうした温かい想いやクラシック音楽に対する理解など、ハンガリー人のみなさんに感謝する毎日です。これまで私を支え、応援してくれた家族や友人への感謝と共に、素晴らしい環境の中でピアノに触れられる喜びを噛みしめています。残り少ない留学生活、より一層の努力と挑戦を続けていきます。
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