私は、日本の大学院に在学する傍ら、昨年の9月からこちらに留学しています。そして、この3月に日本の大学院を修了しました。初めてここハンガリーの地に足を踏み入れたのは、昨年4月のこと。日本での先生が以前ここに留学されていて、先生の音楽の全てはそこで変わったという言葉をきっかけに、その時からハンガリーの地で私も学んでみたいと思い始めました。まずは良い経験になればとリスト音楽院の先生にレッスンをして頂いたのですが、初めてレッスンをこの身で体験したときのことは、今でも全てが鮮明に残っています。演奏に際して、フレーズを繋げるための細かな指番号、内声のニュアンス、曲の奥深い背景、そして何よりも、先生の指、体から奏でるオーケストラのようなダイナミクスにはただただ驚きでした。と同時に、自分にとって不足している部分があまりにも多すぎて、少しでもその隙間を埋めようとピアノに向かい始めたレッスンでもありました。ヨーロッパの中でも西欧とは違った街の空気を感じ、レッスンを終えて帰国した時には、ハンガリーで学びたいという思いが強くなっていました。

 6月にこちらで入学試験を受け、9月から留学していますが、こちらに来てからの生活は、まずは必要な物がどこに売っているのか、その場所まではどうやって行くのか、今まで日本では当たり前だったことにありがた味を感じながらの毎日。先輩留学生や同じく9月から留学している友達、周りにいる多くの人に助けられて、少しずつ自分なりの生活を送っています。 一方で日本の大学院を在学中であった私は、大学院を修了するための演奏プログラムにリストを予定していたため、ハンガリー人であるリストの作品をハンガリーで学べることが更に良い機会でした。日本での修了試験は昨年12月だった為、3ヶ月弱、先生に細かくご指導頂きました。そして試験の前に、こちらで演奏会をすることを先生に勧めてもらい、試験のプログラムを学校の小ホールで全て演奏させて頂きました。この試験前の舞台での演奏は、自分の中でとても大きなステップとなりました。その後、日本に戻ってから試験を受け、無事大学院を修了することができました。現在は、ハンガリーに戻って更なる研鑽の毎日です。 

 こちらでのレッスンは、自分には更には何が必要なのかを考えたり、実際に感じる、とても有意義な時間になっています。驚いたのは、自分のレッスンの時間の前に、ハンガリー人のレッスンを見ていると、弾いてレッスンするのは当たり前なのですが、先生とよく話している事。楽譜を指しながら、とにかくしゃべっています。日本での場合、先生の指導を聞いていることが多いですが、こちらでは、先生との意見の交換の場でもあるのだと、新たな発見がありました。そして、ブダペストでは毎日どこかで演奏会が行われています。日本では考えられないような値段で、更には学校にある大ホールの3階学生席は無料なので、一流の演奏をこの目で、耳で、頻繁に直接感じることができます。気分転換に演奏会にでかけるということもしばしあります。 こういった環境の中でハンガリー人の、人の暖かさを感じながら生活をし、刺激を受けながら音楽を学べることに感謝をし、今後の自分自身にとって大きな糧となるような経験をもっともっとしていきたいと思っています。