3月のバルトーク国際ピアノコンクールで見事優勝した金子三勇士君は、副賞として約束されたオケとの共演のために、ハンガリーを訪問しました。11月17−18日の両日、セゲドでハンガリーの巨匠コヴァチ・ヤーノシュ指揮のもと、セゲド交響管弦楽団とモーツアルトのピアノ協奏曲20番を演奏し、満席の聴衆から万雷の拍手を受けました。

 セゲドに出発する前日、ブダペストのコーシャ−糸見宅で小林研一郎氏との会食があり、その後にオケとの共演のノウハウを伝授されました。曲への入り方、オケが入りやすい受け渡し方、曲の構想力などについて、的確なアドヴァイスが与えられました。プロのオケとの最初の共演の準備として、非常にタイムリーで有益なレッスンでした。ついでに、アンコールで弾く予定の「愛の夢」(リスト)も披露され、マエストロから「愛の詩を歌うように弾いてごらん」と、曲に心を込める手法が伝授されました。
 
 翌朝にセゲドへ出発した三勇士君は、マエストロ・コヴァチとオケに温かく迎えられました。マエストロからは自分で好きなように弾いて良いというアドヴァイスを得て、小林先生から伝授された手法を満遍なく取り入れた演奏で、最初のリハーサルでもうオケと指揮者と一体感を共有することができたと話していました。
 
 両日とも、セゲド国民劇場は立ち見が出るほどの超満員で、若いピアニストの熱演に耳を傾けました。もちろん、聴衆だけでなく、オケも指揮者も十分に三勇士君の才能を評価し、再びハンガリーで共演することを誓って、ブダペストに戻ってきました。
 
 日本へのとんぼ返りでしたが、ちょうど空港でアムステルダムへ出発する小林研一郎夫妻と出会い、セゲドの演奏会の報告ができました。春には東京音楽大学オーケストラの欧州遠征にソリストとして同行するそうです。時間を見つけて、ハンガリーにも来たいと語っています。今後のいっそうの精進と活躍を期待しましょう。