福田 和代のウィーン便り
モネ展とブリューゲル展
福田 和代
![]() アルべルティーナのモネ展のポスターやカタログの表紙に使われている作品「船遊び」は、月刊ウィーン 9月号の表紙にも使っているが、ブルーが印象的なたいへん美しい名画である。この作品に合わせるかのように、展示会場にはブルーの絨毯が新たに敷かれている。「舟遊び」は国立西洋美術館(東京)の所蔵作品で、今回のモネ展では日本からだけでなく、オルセー美術館(パリ)、ボストン美術館、ロンドン・ナショナル・ギャラリー、プーシキン美術館(モスクワ)など世界 40カ所の美術館や個人コレクションから、百点が貸し出されている。特にマルモッタン・モネ美術館(パリ)からは多数の作品が提供されている。 国立西洋美術館はフランス政府から日本に返還された「松方コレクション」を保存・公開するために設立された。 1959年 3月に建物が落成し、 4月に松方コレクション返還作品が横浜港に到着、 6月に開館し一般公開された。松方コレクションとは、当時川崎造船所の初代社長・松方幸次郎氏(1865-1950)が 1910年代後半から 1920年代後半にかけてイギリス、フランス、ドイツなどヨーロッパ各地で買い集めた西洋近代の絵画、版画、彫刻、家具、タペストリーなど西洋美術約 3000点と、日本の浮世絵約 8000点という膨大な美術コレクション。彼は日本に美術館を建てて本物の西洋美術を公開しようとした。 美術史博物館のブリューゲル展は「一生に一度しかない展覧会」と銘打っているだけのことはあり、ウィーン・ブリューゲル・プロジェクトによる新たな科学的分析と研究も紹介されるなど、内容は素晴らしい。ブリューゲルの作品約 90点、うち絵画 30点が展示される。 10月 1日のブリューゲル展オープニングにはベルギー国王も臨席し、ブリューゲル没後 450年のお祭りにふさわしい舞台が用意されている。 筆者は 30年以上も前のことだが、ブリューゲル見たさに何度も美術史博物館に通った。学生だったから入場料は数百円程度。今のように開館前から並ぶ人の列ができるようなことはなく、作品の前にロープが張られておらず、アラームが鳴ったりすることもなく、ほぼ独占して鑑賞に浸ったことが懐かしい。今は 19歳以下は無料だから若い訪問者が多くなったのは結構だが、いつも人が多くてゆっくり鑑賞する雰囲気はなくなってしまった。それでもやはり美術史博物館は一見以上の値がある。まして今回のブリューゲル展は見逃すことのできない一大イベントである。 |
(ふくだ かずよ) |