爽やかな風吹く緑鮮やかな時節、6月5日夜港区三田にあるハンガリー大使館にて、サース・アンドラーシュ/盛田常夫著『腫瘍温熱療法:オンコサーミア』出版記念会が開催されました。出席者は千葉大医学部松原教授や千葉県がん研究センター永瀬所長など医学・獣医学に携わっている方々、「1/fゆらぎ理論」の日本の第一人者である武者利光東工大名誉教授、歴代駐ハンガリー日本大使、斉藤惇東証社長ほかの企業経営者・エコノミスト、美容関連の経営者など多彩な方々総勢60名、そのなかに獣医学専門の秋篠宮紀子様の弟君の川嶋舟さん、指揮者の小林研一郎さん、料理評論家の山本益博さんの姿も見えました。

 ハンガリー大使の流暢な日本語によるフレンドリーな挨拶で会は始まり、くしくも10年前、盛田さんの訳書『異星人伝説』の出版の際も、同じくここハンガリー大使館で同じセルダヘイ大使によって記念会が開催されたとのこと、大使は再び盛田さんとご縁があったことをたいへん喜んでいらっしゃいました。

サース教授 レセプション(マエストロ小林とセルダヘイ大使)

 この後、盛田さんの挨拶、続いてサース・アンドラーシュ教授の講演がありました。従来の温熱療法と比較しながら、自らが開発したオンコサーミアの理論について英語でお話になり、盛田さんが通訳なさいました。カラーのアニメーションをふんだんに使ったスライドによる解説によって、従来の温熱医療の問題点、市場で入手できる機器のメカニズムが紹介され、それとの対比でサース教授のオンコサーミア理論について解説され、専門外で素人の私でもその概念がわかり、大変優れた治療法であることがよくわかりました。個人的には、小さいときから病気がちで薬漬けだったことから、大人になってからは副作用の多い薬に疑問を抱き、東洋医学やホメオパシー、アロマテラピーなどに関心を持つようになりましたが、オンコサーミアがたんなる腫瘍治療法というだけでなく、副作用なく生体の自然回復力を促進する自然療法であるという点が非常に興味深く、今後ますます人々に注目される点なのではないかと思いました。きっと、手術が難しいとされる腫瘍に苦しんでいる人々を助けることができるものと思いました。そして、人間だけでなく、動物や小さなペットたちの病にも、そしてもっと幅広い分野でも効果を発することができるのではないかと期待したいです(日本では動物用の腫瘍治療器の販売が予定されているということなので)。

 生体治療についての講演の後には、心の治療、癒しを・・・(大使の受け売り!)ということで、講演後はミニ・コンサートが始まりました。ブタペストに拠点を置き、世界各地で演奏活動をするピアニスト関野直樹さんと、日本とハンガリーで活動中のヴァイオリニスト浅野未希さんの共演でした。ハンガリー人作曲家を中心に4曲(バルトーク「ルーマニア民族舞曲」、リスト「愛の夢第3番」、リスト「ラ・カンパネラ」、モンティ「チャールダッシュ」)の演奏がありました。関野さんはハンガリー留学中に盛田さんのお世話になったことがあり、浅野さんは盛田さんの次男の奥様という関係で今回のコンサートが企画されたようですが、たまたまステージの後ろには、バルトークとリストの彫像がおいてあり、二人は作曲家に見守られるような形で、素晴らしい演奏を披露してくださいました。

 アンコール曲、ブラームス「ハンガリー舞曲第5番」が終了し、関野さん、浅野さんが退場すると同時に、盛田さんが最前列に着席なさっていた指揮者の小林研一郎さんに「閉会の辞」お願いすると、小林さんは何やらブツブツ、モゴモゴ・・・。しばらくしてお立ちになり参加者に向かって話し始めましたが、閉会のご挨拶は無視なさり(?)、直前に演奏された二人に対してアドヴァイスをしたいと言い出されました。これはコバケンの常套手段のようで、これで場を盛り上げようということのようでした。関野さんと浅野さんはシナリオにない展開に少々戸惑いながら、再びステージに戻り、コバケンのワンポイント・アドヴァイスが始まりました。サース教授は何事が起ったのかと心配気でしたが、盛田さんはいつものレッスンが始まったという気配でした。
 指揮者がタクトを体の前でチョコチョコ動かしてもオーケストラに伝わらないように、楽器演奏も同じこと、大きな振りで情感を表してはいかがですかとのお言葉、奏者の二人、小林さんの指示通りにさわりだけ演奏してみると・・・、まさにコバケン・マジック!たった一言でこんなにも印象が変わるものかと驚くほど演奏に表情が加わりました。さすが、世界のコバケン!その威力を目のあたりに拝見させていただくという貴重なワン・シーンとなりました。そして最後にはまたまたサプライズ。小林さんが出版記念会のために準備された「今日この佳き日に」をピアノの弾き語りで歌われたのです。参加者の方々、予期せぬ小林さんの素敵な歌声にうっとり、拍手大喝采でした。

コンサート セルダヘイ大使挨拶

 ミニ・コンサートが終了すると、ヘレンドの陶器で飾られた部屋で立食パーティーです。ハンガリーのワインとハンガリーの伝統料理が用意され、歓談のひととき。私はまず白ワインを片手にお料理へと一目散。あとでお話させていただいた大使から聞いたところ、伝統料理と新しいお料理がミックスされているということで、どのお料理も美味しくいただきました。

 皆さん、お料理も一通りいただいたあと名刺交換など話が盛り上がっている中、私は何人かの女性参加者の方々とあいさつを交わし、料理評論家の山本益博さんご夫妻のお姿を見つけました。以前、グルメの間で評判の小さなフレンチレストランで食事をしたとき、帰り際に「今まで山本益博さんがこちらの席にすわってらしたんですよ」とシェフに言われ、そのことを話題に話しかけてみたところ、ご夫妻ともとても気さくにお話してくださいました。更なる偶然の重なりは、山本さんはアメリカで上映された(日本では未公開)「Jiro Dreams of Sushi」という映画のナレーターで登場していますが、同席していたサンフランシスコから来日していた友人がその映画を見ており、話は益々盛り上がりました。山本ご夫妻のお嬢様が、現在ハンガリーで盛田さんのお世話になっているとのこと。盛田さんが仕事や著作活動だけでなく、民間レベルでもハンガリーと日本の架け橋となって活躍されていることを垣間見ることができた日でもありました。

 盛田さんは食べる暇もなく忙しく、いろいろな方々とお話しているのを見かけましたが、サース教授はというと、おそらく講演のあった部屋でずっと専門的な質問に追われていたのではないでしょうか、ほとんどの参加者が帰られたあとにお料理の間へと現れ、数名で静かに食事をなさっている姿を見かけました。

 サース教授率いるオンコターム社が開発・製造した医療機器は、現在主にドイツの病院やクリニックで使われていて、日本ではまだ輸入されていないそうです。それでも、日本の大学などでも講演が開催されるとのこと。オンコサーミア理論が日本でも早く認知され、その機器が医療・美容、スポーツ界で幅広く使われるようになることをお祈りします。
 サース教授と盛田さんの出会いはたいへん奇遇な巡り合わせによるそうですが、そこからたどり着いた 「今日この佳き日」が未来の発展へとつながりますように!

(かさはら・ゆうこ BYOOL代表)