豊かな自然に囲まれた、歴史を感じさせる街並み。美しいブダペストの地に建つ現地校の一角を借りた小さな校舎。それがブダペスト日本人学校だ。三年前の春、この日本人学校のホールで私たち平成二十九年度派遣教員は、温かい歓迎を受けた。子どもたちの明るい笑顔と、その周りで優しく見守る教職員。その明るさに「素敵な学校へ来たな。」と感動がこみ上げてきたのが、まるで昨日のことのようだ。
 やがて子どもたちとの学校生活が始まり、右も左も分からないまま過ごす、日本人学校での忙しい日々。授業や行事を何とかこなしていくうちに、この学校の素晴らしさに気づいていった。
 授業では、それぞれが自分の考えを発言し皆で話し合う。例えば算数の授業では、問題が提示され、それに対するそれぞれの考え方を伝え合い、比べ合う。教師側からの一方的な授業ではなく、子どもたちが主体となった、この熱く楽しい雰囲気は、少人数クラスの本校ならではだ。
 毎日の清掃活動。小学部から中学部の学年が混じった縦割り班が、2週間ごとに変わる担当の場所を掃除する。上級生をリーダーとして、協力しながら清掃する子どもたちは、その場所をきれいにしようという意欲にあふれており、短時間で効率的に教室や手洗い場をピカピカにしていく。
 さらに、運動会、ドナウ祭、もちつきカルタ大会などの学校行事。本番に向けた準備や練習の中で、子どもたちは、どうすればそれらをより良いものにできるかを考え、話し合う。限られた時間と場所を最大限に生かし、素晴らしいものを作り上げていく。
 こういった有機的な学校生活の中で、子どもたちはおどろくほど大きく成長していく。初めは自分を出せずにいた子も、みなの意欲にあふれる環境の中で、本来の持ち味を発揮しはじめ、やがてリーダーとしてクラスや学校を引っ張っていくようになる。こういった見事な成長ぶりを見るのは、教師としてとても嬉しいことだ。
 ブダペスト日本人学校は、ひとつの家族だと思う。日本から離れた異国で暮らすということは、本当に大変なことだ。言葉も違えば文化も違う。ファミレス、コンビニ、カラオケ …日本では当たり前の場所もここにはない。しかし、だからこそ子どもたちは助け合い、その結びつきは次第に強くなっていく。
 ところが、寂しいことに、この家族は、常にメンバーが変わり続ける。やっと仲良くなることができた仲間たちと一緒にいられるのは、ほんのひと時。仲間が旅立つ日がすぐにやってくる。子どもたちはそれを知っているからこそ、一日一日を大切に過ごすのかもしれない。
 この素敵な家族と過ごすことができた三年間は、私の宝物だ。共に家族として頑張ってきた、キラキラの子どもたち。いつも応援してくださった保護者や関係機関の方々。そして長くこの学校を支えてこられた現地の教職員をはじめ、先輩や同僚たち。すべての人々に心から感謝したいと思う。
Köszönöm Szépen!