日本学科で勉強している学生たちに、日本のどんなところに興味をそそられたのかと聞くと、その答えに共通点が多いのは当然ですが、あるテーマの魅力をどう伝えるのか、そしてそのテーマをどういう視点から検討するのかは様々です。そして、その多様性は発表やディスカッションにもっと生彩をそえて、大学での学習の面白さに大きく貢献すると考えられます。私にとって、日本について特に興味をそそられたのは10代の頃に心底ほれ込んだ食文化です。

 日本の食文化と聞いて、思い浮かべるのは何でしょうか。私の頭には次のようなイメージが浮かんできます。テーブルの周りに手を合わせて座っていて、お弁当を食べ始める前に食事の提供や調理などにかかわった人への挨拶として「いただきます」と言う子供たち。深くなる夕闇に市内の曲がりくねった街路を照らす飲食店の提灯。山間部の温泉旅館にてもてなされる懐石料理。それぞれの食材に、それぞれの特別な意味のある御節料理。深山幽谷の豊かな自然に包まれた場所で作られた山菜料理。ハンガリー人の私には、なめろうやしらす丼のような海の幸が豊富な料理は特に面白く見えます。

 ただ、それ以上に、創造的なお弁当でも、伝統的なごちそうでも、地域色豊かな料理でも、旬の素材を巧みに使うこと、そして、大福餅やうどんなどに見られるように、一つの食べ物にも様々な種類があることこそが、日本料理の強い魅力だと私は考えます。それらの特色に惹かれ、日本の食文化に関してもっと勉強しようと決めました。例えば、次のようなことを知りました。茶の湯の際に空腹を満たす食事を意味する「懐石料理」の「懐石」は、元々「会席」としるされていましたが、茶道と禅宗の深い関連によって漢字が変わりました。「懐石」の由来は修行僧が修行の厳しさをしのぐために懐に温石を入れたという行為です。さらに、「精進料理」の「精進」とは啓蒙の道に沿って世俗的な思考や愛着のない心の状態を追求することに対する熱意を意味します。したがって、自然との調和の精神を育てるために、精進料理の各食事では五つの種類の色と味のバランスが重視されます。そして、料理を作るときに無駄になるものはなく、食材はすべて、何らかの形で食卓に現れます。

 日本料理に関するドラマや映画も勉強になりました。今までに見た作品の中で特に好きなのは「孤独のグルメ」です。個人で輸入雑貨商を営んでいる主人公が、仕事の合間に様々な飲食店に立ち寄ります。エピソードの多くは雑多な雰囲気のある迷路のように入り組んだ東京の下町が舞台となっていて、相撲の街として知られている墨田区両国のちゃんこ鍋や、中央区月島のもんじゃ焼きなどのような名物料理がたくさん現れます。私がとりわけ面白いと思ったのは郷土料理です。例えば、きりたんぽを地鶏やキノコやねぎなどとともに鶏がらのだしで煮込むきりたんぽ鍋は、秋田県の名物料理です。きりたんぽとは、つぶしたご飯を木の棒に巻きつけて焼きあげたもので、元々冬に狩猟を行うマタギ(東北の猟師)の保存食ですが、今でも秋田県の学校で冬の給食として人気があるものだそうです。

 また、群馬県で作ったすき焼きは、上州和牛やこんにゃくから下仁田ネギやしゅんぎくまで、すべての食材は県内産でそろえられるそうです。私が自分でも作ってみた名物料理は、福岡市の「博多ラーメン」としても知られている濃厚な豚骨ラーメンです。硬くない麺を使い、トッピングとしてネギとチャーシューとゆで卵をのせました。もし私が中州で屋台を持っていたなら、自分で作った豚骨ラーメンはおそらく商売繁盛につながるものではありませんが、調理はなかなか楽しかったです。

 私にとって、食文化について勉強するのは日本に関する勉強の中で最も面白く、楽しい部分の一つです。卒業論文も、ユネスコ無形文化遺産に指定された和食をテーマに選びました。今後も日本の食文化に関して知識を深めたり、直接体験したりして、将来は日本料理の魅力を広めることに貢献したいと思います。

(ニコム・アレクサンドラ)