私は今、ハンガリーでプロ選手としてハンドボールをしています。ハンドボールを始めて今年で18年目になりました。なぜハンドボールを始めたかというと、私の小学校は京都府の京田辺市というところにあり、京都国体が行われて以来、毎年、小学校の全国大会がこの京田辺市で開催されていて、この市の9つあるすべての小学校がハンドボールチームを持っていて、ハンドボールというスポーツがとても盛んな地域だったからです。 中学時代を除き、全国大会の決勝の舞台を経験させて頂き、指導者にも恵まれた環境の中でハンドボールをしてくることができました。そのおかげで今の自分がありますし、恩師には本当に感謝しています。 私がジュニアプレイヤーの時(U20)、初めてハンガリーを訪れました。大会前のトレーニングマッチを、ハンガリーの同じジュニアチームと行いました。その時のチームが、今私が所属しているFehérvár KCのジュニアチームです。海外でプレーすることは、その頃考えてもいませんでしたが、ハンガリーで試合を行い、このチームに声をかけて頂いて、初めて「海外」という場所を視野に入れるようになりました。 その時、私はまだ、大学在学中だったので、ハンガリー行きを諦め、そのまま日本でプレーすることを選びました。 大学を卒業し、実業団で2年間プレーし、その後にここハンガリーに来てちょうど1年が経ちました。初めて「海外」という場所でプレーすることを考えた時は、「本場のヨーロッパでプレーしてみたい」、「自分のプレーがどれだけ通用するか試してみたい」という気持ちだったのですが、今では、「オリンピックに出るために自分を高めたい」、「プロとしてハンドボールをしたい」、「ヨーロッパのプレーをもっと学びたい」という考えに変わりました。 ハンドボールはヨーロッパ発祥のスポーツで、今もヨーロッパが本場として行われているスポーツです。ヨーロッパの選手は、体格も大きく、日本では大きい方の私でも、こちらの選手と並ぶと小さく感じます。それくらい体格差はありますし、パワーも違います。私達日本人には何が足りないのか、必要なものは何か考え、実際に肌で感じながら日々トレーニングしています。
日本のハンドボール界は、男子は1988年のソウルオリンピック以来、女子は1976年のモントリオールオリンピック以来、オリンピックに出場していません。ですから、何としてでもオリンピックへの切符を取り、オリンピックに出場したいし、それによって日本にもっとハンドボールを広められたらと考えています。 私が今所属しているFehérvár KCは、ハンガリーの中西部に位置するSzékesfehérvárという町にあり、ハンガリーの歴代国王が戴冠・埋葬された都市として知られています。チームは、ハンガリーの1部リーグで昨シーズンは12チーム中、6位という結果でした。ハンガリーのリーグはヨーロッパの中でも高いレベルではありますが、チームが目標としていた4位以内には届かなかったので、来シーズンはもう一度、この目標に向かってチャレンジしていきたいと思います。 1年間、ハンガリーでプレーしてみて、やっとヨーロッパでプレーする夢が叶った喜びと同時に、全く違う環境の中での生活、プレーすることの大変さを学びました。私が、海外で生活、プレーするにあたって大切だと思ったことは、どんな些細なことでも言葉にして伝える、ということです。ただでさえ違う環境に育ってきた同士なので、コミュニケーションは欠かせません。言葉を話せない、通じない、理解できないことは、私にとってすごくストレスとなりました。 こちらの人は、自分がこうだ!と決めたことは、周りに関係なくそれを貫き通します。私が意見を言う前に向こうの意見を通されたり、私が何か言っても向こうの意見を優先されたりというのがよくありました。人の意見を聞き入れないといけない時もあるのではと思うところでもありますが、逆に考えるとこれがこちらの人の良い部分でもあるし、日本人の良さを出しながらも見習いたい部分でもあります。 人に何を言われても自分の意見を曲げない、それくらい強い意志を持っています。たとえその相手が監督であっても同様です。日本ではあまり考えられないことではありますが、プレー中に監督に何か指摘されて、それが自分の考えと違った時は、監督にも意見します。私もそれくらいの気持ちを持ってやらないといけないし、私に足りない部分を成長させてくれる良い環境だと思っています。 海外での生活になかなか慣れない、そんな時の支えとなったのが、こちらで出会った日本人の方々、家族、そして今のチームメイトであり、同じ日本のナショナルプレイヤーでもある先輩の存在でした。日本ではライバルチームとして戦ってきましたが、今となっては良き仲間であり、尊敬する先輩です。今年はオリンピック予選の年。10月に名古屋で開催されます。先輩とともに、ここハンガリーで自分を高め、予選までに最高の準備をしていきたいです。 人との出会いに感謝し、これからもハンドボールを通して多くのことを学びつつ、日本にハンドボールを広めるきっかけになれたらなと思っています。
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