この夏に初めてハンガリーへ来て、4か月が経ちました。ようやくハンガリーでの生活にも慣れ、音楽の勉強にも集中できるようになりました。私がハンガリーへ留学するきっかけとなったのは、武蔵野音楽大学で4年間クラリネットを指導してくださったカールマン・ベルケシュ先生から留学を勧められたことでした。初めは同大学の大学院を勧められていたのですが、経済的な理由から入学することは不可能であり、就職を考えていたところハンガリーで勉強させて頂ける機会を頂きました。日本でレッスンをして頂いている間に先生から何度もハンガリーのオーケストラの映像を見せて頂き、またリスト音楽院のオーケストラが来日した際に演奏を聴き非常に感銘を受け、ハンガリーの音楽家やハンガリーの音楽教育について非常に興味を持ちました。しかし、ハンガリーという国については知らないことが多く、留学前には何度もナーバスになっていました。 夏から大学が始まるまでは、4週間デブレツェンの夏期大学でハンガリー語を学びました。授業はすべて英語で、ハンガリー語はおろか英語すらまともに話せなかった私にとってこの4週間は少々大変でしたが、様々な国の友達を作ることができました。週末にはエゲルやホルトバージなどハンガリーの観光地へ小旅行に行き非常に充実した日々を過ごすことができました。食事は毎日ハンガリー料理のブッフェで、日本から来たばかりの私には少々重たかったですが今考えるととても贅沢だったと思います。 夏期大学が終わると、セーチェーニ大学のあるジュールへ越して来ました。ジュールは小さい街ですが、美しい河と暖かい人々がとても気に入っています。聴講生なので授業はあまり多くはないですが、本場ヨーロッパに住む学生達と一緒に音楽を勉強することはとても良い刺激になっています。授業はすべてハンガリー語ですが、そのお陰でハンガリー語もずいぶん上達してきていると思います。実技系の授業の他にソルフェージュの授業も受けさせて頂いていて、日本とは少し違うので新鮮に感じています。また、ベルケシュ先生が指揮しているジュール・フィルハーモニックオーケストラのリハーサルや演奏会を何度も聴かせて頂いており、プロの演奏を身近に感じられることは私にとってとても貴重な勉強になっています。日本にも都市によってはオーケストラがありますが、ここのオーケストラは非常に街に密着している印象を受けました。 ジュールには日本人に対して理解のある方が多く、日本に興味を持ち日本語を勉強している方も沢山いらっしゃいます。またジュールはブダペストとウィーンの中間あたりに位置しているのでどちらへも1時間半ほどで行くことが出来ます。気軽にブダペストへオペラを見に行ったり、ウィーンへウィーンフィルの演奏を聴きに行くことも出来ます。まだ数回ほどしか訪れていませんがこれから何度も行こうと思っています。 初めはハンガリーがどのような国かもいまいちピンと来ておらず、不安でいっぱいでしたが、生活をしていくうちにハンガリーが好きになり、ハンガリーへ来て本当に良かったなと感じています。日本では地元とは遠く離れた東京で音楽を勉強するためにアルバイトと練習を両立しなければならず毎日時間に追われていましたが、今は音楽にだけ自分の時間を注げるのでとても幸せです。 まだハンガリーでの留学は始まったばかりです。留学が遊学にならぬようこれからも毎日を大切に、存分にハンガリーの土地を感じ理想の音楽家を目指し成長していきたいと思っています。まだ帰国の予定は定まっていませんが、日本に帰ったら多くのハンガリー出身の作曲家作品を取り上げて演奏活動を行いたいと思っております。また日本とハンガリーの文化交流活動にも参加出来たら、と思います。 ヨーロッパで過ごす初めてのクリスマスが近づいています。少しずつクリスマスモードになっていく街に胸を膨らませつつ、後悔をしないよう一生懸命練習に励んでゆくつもりです。
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