ドナウの四季の読者の皆様、大変ご無沙汰しております。水球選手の長沼敦です。徐々に春の日差しを感じるようになってきた今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?
私は昨年秋より、ハンガリー南西の街ペーチにある、PVSKというチームに移籍致しました。PVSK(Pecsi Vasutas Sportkor)は1919年に設立され、 陸上、柔道、バスケットボール、サッカーなど多くの種目から構成されているスポーツクラブです。過去に陸上競技などではオリンピック選手を輩出している実績もあります。
その中で、水球部門は2004年にペーチに室内の温水プールが出来たことから、街とクラブが一体となりスタートしました。水球チームとしての歴史はまだ浅く、これまで過去最高は1部リーグ5位です。日本ではプールが出来たからといって、水球をはじめよう!とはなりませんが、人気、実力が共に高いハンガリーならでわのことです。
このチームに移籍した経緯は、ブダペストにある前チームのUTEより、監督PetikAttila氏の移籍に伴い、一緒に来ないかと勧誘を受けたことがきっかけです。移籍には様々なリスクを伴いますが、昨シーズン一緒に戦ったこの監督となら、良い信頼関係のもとプレー出来ると考え、決断致しました。
10月から始まったシーズンは、ここまで7勝1引き分け12敗で13チーム中7位です。上位争いには遅れをとっておりますが、チームの規模からすると順調です。個人としては、主力として出続けております。得点はチーム2位の25得点。ここまで順調に来ているので、最後までベストを尽くしていくのみです。
ところで、ハンガリー代表の水球チームはオリンピック王者ですが、ここ最近はなかなか結果が出ていません。昨年夏に行われたヨーロッパ選手権ではクロアチア、イタリア、セルビアに次ぐ4位に終っています。またクラブチーム対抗で行われるユーロリーグという試合でも、国内トップチームでさえ、優勝争いからは、既に外れています。ロンドン五輪へ向けて、どう巻き返しをしていくのか気になるところです。
こういう世界では、上手くいっているチームがあれば、そうでないチームがあるのは当然のことです。国内のトップチームといえど、上述のように結果が出ないと減給や解雇などの話を耳にします。不況の影響はありますが、本当にシビアな世界です。
シビアな世界というと、接触プレーが認められている水球は、肉体的にもちろんタフでなければなりません。2月に行われた試合で、相手選手のパンチを顔面に受け、瞼を3針縫う怪我をしました。それでも次の日の試合には、また出場することが出来、ドクターの技術に感謝しています。そのときに感じたのは、怪我を恐れない強い勇気だけでなく、ときには休む賢い勇気の両方が必要ということです。なぜなら次の日に出た試合では、違和感のために満足したプレーをすることが出来なかったからです。
ハンガリーに渡り4シーズンを戦ってきました。そしていよいよ私が目標とする2012年のロンドンオリンピック、その予選が具体的に近づいてきました。2012年の1月に千葉県で開催されることが決定し、予選まで遂に残り1年を切りました。これに向けて、今年は合宿や遠征が例年以上に組まれ、強化を徹底していくことになります。日本では確かにマイナーな競技ですが、そんな水球チームが20年越しで夢を叶える。不況だ、何だと見えないことが多く、不安定な日本に、明るい話題で皆さんに少しでもエネルギーを感じて頂ければ、水球選手として、一人の大人としてこんなに幸せなことはありません。ハンガリーという縁を通じて、この水球という競技を知って頂いた皆さん、是非応援を宜しくお願い致します。
最後に皆さんのご健康とご活躍を、ペーチの街より願っております。読んで頂きありがとうございました。
この手紙を書いている、ちょうどその頃に、日本で大地震が起こってしまいました。この震災に際し、お亡くなりになられた方のご冥福を心よりお祈りを申し上げます。言葉が見つかりません。私はただ、日本の復興にほんの僅かでも貢献出来るよう、スポーツ選手として明るい話題を届けられるよう、ベストを尽くして参りたいと思います。
募金サイトと、ハンガリー、そして世界の水球からのメッセージページを作りました。限られた中ですが、わずかでも出来ることを協力していきたいと思います。皆様のお仲間に広めて頂ければ幸いです。
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