ブダペスト工科経済大学電気工学部で勉強しています。日本語を勉強して、今月でちょうど3年になりました。3年前、私がなぜ日本語を選んだのかというと、以前から英語の他にも外国語が勉強したかったのですが、大学も忙しかったし、どんな言語を勉強したらいいかもよく分かりませんでした。結局、長い間か考えた上で、ロシア語と中国語と日本語の中から選ぼうと決めました。ロシアと中国の文化はあまり知らないのに対して、空手や合気道もやったことがあるし、アニメもよく見るし、日本人と会ったときに本当によい印象を受けたから、その中から結局日本語を選んだのは当然かもしれません。
 高校生の時は、先生達からいつも「言語能力が低い」とか、「才能が全くない」と言われていました。だから、最初は日本語でも自信がなかったし、勉強に対する熱意もあまりありませんでした。当時の私が、「外国語を勉強することによって何が得られるか」と質問されたら、単に「仕事で役に立つかもしれないし、履歴書にも書ける」と答えただろうと思います。たまたまラッキーだっただけかも知れませんが、実際に私がこの3年で体験したことは、当時期待したことよりずっと大きいことでした。
 まず、最初の1年間で、外国語の勉強の楽しさがよく分かるようになりました。日本人の先生に今まで全然知らなかった文化を教えてもらい、どんどん世界が広がっていくのはすごく面白かったです。また、単純なことですが、言語は才能を問わず、勉強すればするほど上手になるということを発見しました。
 みなさんは、世界で最近話題になった「80対20の法則」をご存知ですか。簡単に言えば、20パーセントの動力は80パーセントの結果になるという意味です。たとえば言語について言えば、一番頻繁に使われる20パーセントの言葉を知っていると、文章の80パーセントは理解できます。でも、コミュニケーションする時には、逆に完全に動力しても、速く上達することはできません。ですから、言語学習は長期の投資として見なければなりません。
 ちょうど1年前、「エアコン」という日本語とハンガリー語の交換授業で、ハンガリーに留学中の日本人や、日本に興味があるハンガリー人たちと、ほとんど毎週会うことになりました。授業では、はじめに前の週に決めたトピックについてハンガリー語と日本語で書いた文章を皆が1人ずつ読みます。参加者の言語能力は様々なので、まだ自分で文章を作れない人には皆が手伝って、言いたいことを翻訳します。次に、前の週に覚えた言葉や何かわからない単語について自由に尋ねて、母語話者の人達からアドバイスをもらいます。最後に、ハンガリー語も日本語も使わなければならない面白いゲームをやります。

 エアコンの授業に通って1年間の経験で感じたのは、普通の授業ではあまり勉強できないことをたくさん勉強したということです。国際交流基金で一緒に勉強している同級生達と比べたら、私はまだ経験が足りなくて、時々授業のペースに追い付けなかったのですが、普通の生活やコミュニケーションの時に本当に役に立つ言葉を知っているから、いつも授業で取り扱われるトピックからちょっと離れたら、皆よりも自信があります。
 ハンガリーに来た留学生達に色々な所を見せたかったし、短くても楽しい1年間を過ごしてほしかったから、週末など時間があるときは色々な遠足に行きました。皆にとってどんな経験だったか分かりませんが、私にとっては一生忘れない思い出です。
 その他にびっくりしたのは、この1年における、ハンガリーに対する自分の考え方の変化です。元々ハンガリーはいい国だと思っていましたが、もう長い間ここに住んでいるから色々なことに慣れすぎていて、あまりハンガリーの習慣を守らなくなっていました。でも、ここに来る留学生達は、私にとってはなんでもないような細かいことにも驚くので、私も自分の国を外国人の観点から再発見しました。
 日本語を勉強しているおかげで日本に行くこともできましたから、日本語を選んで本当によかったと思っています。自分に対して言いたい一つの文句は、どうしてもっと早く勉強を始めなかったのか、と言うことです。たぶん誰にとっても、自分の文化と違うことを経験するのは面白いことだと思いますから、早く始めないと私と同じように後悔することになるかも知れません。
 ハンガリーはヨーロッパの中央にあって、たくさんの国に囲まれています。しかし、ハンガリーに似た文化や言葉を持つ国は周囲に全くないから、ハンガリーは島国のようだといっても過言ではありません。だからこそ、日本とハンガリー、この二つの国の人がお互いの言語を勉強するのはとても大切だと思います。

(ヘゲドゥシュ・アーコシュ)