こんにちは。現在ブダペストで「ハンガリー学(Hungarologia)」を勉強している竹田麻子と申します。私は極度のハンガリー中毒です。私のハンガリー中毒は、学生時代に1年間デブレツェンへ留学した時に始まりました。当時の大阪外国語大学でハンガリー語を専攻し、2年半の勉強を終えた後、デブレツェン大学に通い始めました。しかし、大学の二年半を学業のみに費やしたわけではなかった私は、留学当初は全くと言って良いほどハンガリー語が理解できず、「ありがとう」、「ごめんなさい」、「ハンガリー語専攻の1年生です(これは1年生の最初の授業で繰り返し練習したので、頭に残っていたのです!ただ残念ながら、留学時はすでに3年生でした…)」程度しか話すことができませんでした。そんな中でも、ハンガリー人や他国出身の留学生仲間にも恵まれ、ハンガリーのお母さんと呼べるような人が二人もでき、食べて飲んで、これまでの人生で最高と思える1年を過ごすことができました。もちろん、差別をされたり失敗したりと悔しいことも色々ありましたが、振り返ってみれば楽しいことの方が断然多かったように思います。
 楽しかった思い出に招かれるように、留学を終えた後も毎年ハンガリーへの旅行を続けていました。ハンガリー人の友人に会ったり、私と同様ハンガリー中毒でハンガリーへ舞い戻ってきた留学仲間と会ったりして、毎回「やっぱりハンガリーは最高だ!」という思いを強め、次のハンガリー旅行計画をたてるのでした。
 大学卒業後は企業に就職し、全くハンガリーと関係のない業務に就きました。仕事は充実していましたが、「やっぱりハンガリーで働きたい!」という強い思いから退職、幸いなことに奨学金プログラムに参加できることになり、2009年9月からBalassi Intezetで「ハンガリー学」コースで勉強中です。
 さて、この「ハンガリー学」コースですが、これはハンガリー語を始め、歴史、文化、社会など、とにかくハンガリーに関わること全てを勉強するプログラムです。授業は全てハンガリー語で行われ、期末には筆記、口頭試験も待っています。ハンガリー中毒の私ですが、予想していたよりも濃い授業内容に面食らってしまいました。クラスメートはポーランド人、ブルガリア人、セルビア人、クロアチア人、ルーマニア人、トルコ人で、皆ペラペラとよく話します。親がハンガリー人である学生もおり、予期せず上級者クラスに入った私は、初めはクラスメートの語学力の高さに驚き、とてもついていけないと焦りました。しかしながら、ここで負けては仕事を辞めてまで来た意味がない!と思い、必死でクラスにしがみついている状態です。
 私がクラス唯一の(東)アジア人ですが、メリットもデメリットもあります。デメリットから挙げると、日本語とハンガリー語で共通する単語が少なく、わからない単語が人一倍多いということです。特に、病名や学問の名前などラテン語起源の単語については、私には「単語からでは想像もつきません!」というものも、クラスメートたちの母語では同じラテン語起源の単語となっているものが多々あり、彼らにとっては完全にハンガリーオリジナルの単語よりも理解し易いようです。メリットとしては、ハンガリーを含めヨーロッパのそれと大きく異なる日本の文化、習慣が興味深いらしく、日本やアジアに関する何を言っても、クラス全員が面白がって耳を傾けてくれることです。これは単なるメリットでなく、彼らの優しさでもあります。
 昨年9月から約半年間、順風満帆とはいかないながらもテストなどを乗り越えてきたおかげで、最近は自分のハンガリー語力にも自信がついてきました。今回のプログラムを通して一回り成長できた自分を武器に、最終的な目標であるハンガリーでの就職を目指し、一歩一歩前に進んでいこうと思います。
 きっと私のハンガリー中毒は、この先も治ることはないでしょう。