ハンガリーに来てもう2年が経とうとしています。フランスやドイツに留学する友人が多い中、どうしてハンガリーを選らんだのかと聞かれることがよくありますが、私の場合1枚のCDを聴いたことがきっかけでした。それはハンガリー祝祭管弦楽団のバルトークの作品のものでしたが、生命力溢れるリズム、故郷を感じさせるメランコリックな旋律、心に訴えかけるような演奏に深く感銘し、当時このオーケストラで演奏していたリスト音楽院のクラリネットの先生の下で勉強することを決心しました。リスト音楽院のクラリネットの授業は週2回あります。1回は音階、エチュードなど基礎的なことを主に勉強する時間、そしてもう1時間は専属の伴奏者がついて曲のレッスンを受ける時間です。ハンガリーの作曲家の曲を持って行くときには先生方は特に熱が入り、アクセントが言葉の頭に置かれるハンガリー語との関連性、それに伴ったリズムの独特な表現など、私の体にしっかりと染みつくまで教えてくださいます。 1年目は先生の仰ることが、頭では理解できても手段が分からず、また技術的な面の不足からうまく自分のものとして表現出来ない悔しさを味わいました。また、ハンガリー人の友人たちとのコミュニケーションがうまくいかない事が多々あり、相手も私もお互い何を言いたいのか分からないので、会話が成り立たず困ったこともありました。しかし、そのような中でもハンガリー人の優しさに触れる機会がたくさんあります。バスがぎゅうぎゅうに満員でどう見ても乗れるスペースがないのに、「乗れるよ、おいで!」と知らない人が声を掛けてくれたり、友人と自転車でセンテンドレまで出かけた帰りに、道で転んで自転車が壊れてしまい、駅まで車で乗せていってくれたりと、日常生活の中でハンガリー人の優しさを発見する嬉しい日もありました。また、生活面や考え方、価値観など学んだことがたくさんあります。地方から出てきている学生は必ずと言っていいほど週末は実家に帰り、家族と過ごす時間をとても大切にしているように思います。 2年目になると友達とも打ち解け、いろいろな相談をしたり飲みに行ったりという事が増えました。また、クラリネットの演奏の面でも、少しずつですが自分の理想に近づいているのが実感できるようになっていき、4月にあったハンガリークラリネットコンクールで、1位を頂くことができました。私以外は全員ハンガリー人というコンクールでしたが、アジア人の私が1位を頂けたことに先生方はじめたくさんの友人も私以上に喜んでくださいました。また、これがきっかけとなり憧れであったブダペスト祝祭管弦楽団に秋にエキストラで演奏させて頂けることになり、心から嬉しく思っています。貴重な経験の中で少しでも多くのことを吸収できるようにしっかりと準備をして、次に繋がるように挑みたいと思っております。 せっかく勉強しているのだから、気が済むまでやりなさい。と背中を押してくれている両親、こちらで支えてくれているたくさんの友人、先生方に心から感謝しています。
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