本年は対抗戦が始まって10年、10回目を数える記念大会を、ここハンガリーのホームコースで開催できることは、単なる、持ち回りのタイミングだけでなく何か剛運を感じる。事の始まりは、2005年、JETRO事務所(オーストリアと記憶)が発起人となり、中・東欧4カ国、オーストリア(A)、チェコ(CZ)、スロヴァキア(SK)、ハンガリー(H)のゴルフの戦いが始まった。大会は年に1回、会場は持ち回りのルールに従って開催される。大会名に「親善」とあるが、最近は スコアへのこだわりが強く、ここ数年、大会前に、各国が秘密裏に複数回にわたる下見プレーを行うことからでもそれが伺える。
 我がチームの9回までの成績は決して満足できるものではなく、「来年こそは」を繰り返しつつ、10回目を迎えてしまった。過去の成績は9戦中2勝、勝率22%であった。
 今年はハンガリーチーム内に、過去に記憶がないほどのショックが走った。ベストグロスをもぎとっている80打代の真の実力者4名が、次々と帰任したのである。また、90打代前半に手堅くまとめる、巧者も複数名帰任した。どこのチームも駐在員を主要構成メンバーとするので条件は同じともいえるが、ハンガリーチームにとっては、実力者のほとんどが抜けるという重大な出来事であった。
 団体戦のルールはグロススコアの上位8あるいは9名の合計スコアを争うことから、ハンガリーチームへの負のインパクトは強烈であった。昨年と比較して、上位6名が入れ替わることになる。新入部員は加入したが、コースに慣れていず、スコアのバラツキが多く不安があった。
 「ホームでの大会」、「10回目の記念大会」、「来年こそは」と言い続け、オオカミ少年状態化していた。ハンガリーが優勝しなければならない状況だったが、新部長は涼しい顔をして、プレッシャーを楽しむだけの余裕を見せていた。
 だが、悪いことは続くものだ。春のマッチプレーの準々決勝の試合で、実力派の某店主に1UPの僅差で敗退してしまったのである。勝負は最終ホールで決着した。負け方が悪かった。そのショックが主要メンバー帰国に加え、二重苦として新部長に乗りかかった。大会が近づいて、練習ランドを行っても、どうも選手同志がしっくりしない。本来、チームのベクトル合わせに活躍をするはずの部長が、自分の調子合わせで、他人事どころではないのである。
 そのようなチーム状態で 6月29日(日)の本番を迎えてしまった。今回の参加選手数は70名と大繁盛である。困ったのはハンガリーの大会幹事である。70名をどうさばくか。大会は日曜日のため、終了後、各国チームは月曜日に向けて帰国する。そうすると、遅くとも4時前には表彰式を終了させたい。そこで、10回目の大会は初めて、OUT、INそれぞれ9組が同時スタートすることにした。会場のパンノニアゴルフ場の全面的な協力を頂いた。
 しかし、難問が発生した。過去から引き継いでいるスコア集計ソフトは、シンプルにOUTから順次スタート用として完成されたものである。これを同時スタート用に改造することが求められた。ソフトを作った人はお解り頂けると思うが、他人の作ったソフトを改造することは時間と根気の戦いである。「個人戦のダブルぺリア」、「大波賞」、「小波賞」、「発表の演出」など単純ではない。某ロジ会社の若手が半分業務命令のもと精力を注ぎ込んだ。その結果、解読、改造に成功したが、実際に機能するかどうかは当日の成績発表時まで分からず、ぶつけ本番であった。
 本番当日は7時の受け付け開始を待たずして、続々と各国チームのユニフォーム姿の選手が景品を抱えて、集合してきた。戦いは始まりつつある。
 敵のチームは勇躍、集合しつつあり、わがチームは負けじと奮い立つ。天気晴朗で微風なり、グリーンの転がり早し。

 試合を終えた選手が、順次それぞれの結果を抱き、本部に戻ってきた。チームメンバーが帰還する都度、歓喜の叫びや悲痛な叫びが上がる。選手の顔が輝いている。結果発表である。改造した集計ソフトは愚図らないか心配。最終的に総勢67名の参加となった。まず、個人戦、ダブルぺリア方式の発表。下位から順次10名ごとにまとめて、発表、更新される。下位にはハンガリーチームのメンバーはパラパラと散見されるだけ。マズマズの出足。中盤から上位にかけて、我がチーム名の露出度が高くなる。期待できる。ここまで 改造ソフトは機嫌よく動いている。残り5名。嬉しい事に個人戦ベスト3に、我が新部長が準優勝で入り込んでいた。二重苦の中でプレシャーを跳ね除け、準優勝とは立派、素直に拍手である。
 次に団体戦の結果である。チームの真の実力がでる。この時点でソフトの改造者を含め、だれ1人として結果を知る人はいない。団体戦の発表は各チームの上位9名が順次横並びで、4名ずつ発表されるロジックになっている。まず、各国の1位が映る。さすがに4名とも80打代である。2位からばらけてきたが、まだハンガリーとSKは80打代。AとCZが90打代に変わった。3位は4チームともに90打代となった。4位はSKが3桁打へ、5位はAが3桁へ変わった。
 ついに、勝負はハンガリーとCZの一騎打ちとなった。CZは2年連続優勝チーム。3年連続優勝が懸かっている。6位はまだH、CZともに90打代で拮抗している。この段階では優勝チームはパソコンの中。次に7位の発表へ。司会のドーンの合図でキーは叩かれた。スクリーンはCZチームの3桁打代を映した。Hはまだ90打代。この時点でハンガリーチームの優勝が決定した。
 その後、8位、9位もハンガリーチームは90打代と圧勝だった。チェコチームは粘ったが、最終的に後半で力尽き3位。オーストリアチームは後半に挽回してシブトク2位。スロヴァキアは4位であった。優勝のハンガリーと準優勝のオーストリアチームとでは9名の合計ストローク数で25打の差があり、文句なしのダントツ優勝であった。
 次回もチームバランスで行くぞ、ドーン。

(まちの・のりよし ダイヤモンド電機)