ハンガリーに来て4ヵ月経ち、段々と寒くなり、雪が散らつき、いよいよ本格的な冬がはじまりました。ヨーロッパ・ハンガリーでの初めての冬です。
 私は東海大学文学部ヨーロッパ文明学科に在籍し、卒業論文でハンガリーの民族音楽について扱っています。初めてハンガリーの民族音楽に出会ったのは、大学1年生の時に授業で聴いたハンガリー民謡です。何処と無く悲しげな雰囲気と、ハンガリーの大平原と農民たちの素朴な暮らしぶりが目に浮かんでくるような印象を受けました。それ以来、ハンガリーの民族音楽に興味が湧き、卒業論文を執筆することにしました。しかし日本で得られる情報は少なく実際にハンガリーに住んでみて、語学を学びながら、民族音楽について研究してみたいと思い留学を決意しました。
 9月からバラッシでの授業が始まり、様々な国から来た留学生とともに学んでいます。授業内容は教科書を用いたハンガリー語の文法や会話の練習、その他にゲームを行ったり音楽を聞いたり、クラスメイト同士が自分の出身の国や街について発表し話し合ったり、様々な形式で行われます。授業のペースが速いのと、授業が全てハンガリー語で行われるので、苦労しますが、毎回とても楽しく充実しています。そして、覚えたハンガリー語は寮や街で積極的に使うように心掛けています。最初の頃は、一生懸命ハンガリー語で注文したり、尋ねたりしても、私の語学レベルが低すぎるので相手が英語で答えて来て、毎回悔しい思いをしていました。しかし最近は少しずつハンガリー語で相手と会話する事が出来るようになり、街中や寮でも以前よりハンガリー語で会話する機会が増えました。しかしまだ相手の言っている事が聞き取れなかったり、文法や単語が間違っていたり不完全ですが、少しずつ自分のハンガリー語が上達しているのが実感出来る毎日を送っています。また、民族音楽のコンサートやターンツハーズ、国立歌劇場やオペレッタ劇場、教会で行われるコンサートにも頻繁に出掛けています。
 バラッシの寮はゲレルート山の麓に位置していて、なのでツィタデッラへはよく散歩がてらよく出掛けます。展望台から眺めるブダペストの景色は大好きです。真ん中にドナウ川流れ、ブダ側の丘には王宮、マーチャーシュ教会が経ち、ペスト側には国会議事堂、聖イシュトヴァーン大聖堂、賑やかなペストの街並みが見えます。そして、その間がマルギット橋、くさり橋、エルジェベート橋、自由橋とそれぞれ個性的で素敵な橋で結ばれている。「とても素敵な街だ!」といつも感じます。日本にいる家族や友達に見せてあげたい景色です。
 ハンガリーはヨーロッパの中でも、とくに食文化が豊富な国だと思います。食文化が豊富な国に来たら市場へ出掛けるのが一番だと思います。放課後や土曜日に中央市場へはよく出掛け、野菜や果物、肉やサラミ、ワインやパーリンカを買い、2階のビュッフェではクーヤーシュやハラースレー、パプリカチルケ、マルハ•ポロコルト、パラチンタ、ラーンゴシュなど大好物なハンガリー料理を食べるというのが定番コースです。
 もう一つ私がよく立寄る場所はブダペスト東駅です。私は幼い頃より鉄道に乗るのが好きで、今でも頻繁に鉄道旅行をします。東駅は西駅や南駅よりも国内長距離列車や国際列車が多く発着し、毎日多くの旅人達で賑わっています。ホームには長距離でやって来た列車が電気機関車に引かれ、やれやれといった感じにゆっくり止まる。夜行列車が出発するホームでは見送る人と見送られる人、恋人達が抱き合い、手を触り合いながら別れを惜しむ。その姿を尻目にテールライトを残して列車は出発して行くという何ともいえない郷愁が漂う光景を見ることができます。日本ではなかなか目にする事が出来ない光景になってしまいましたが、ハンガリーでは今でも目にできます。その光景を私は指を加えながら眺め、今にも目の前に止まっている列車に飛び乗り、旅に出たい気持ちを押さえつけています。
 クリスマスにはトランシルヴァニア地方へ出掛ける予定です。私が研究している民族音楽や民謡、民族舞踊の多くは現在ルーマニアになっているトランシルヴァニア地方のものです。またこの地域には多くのハンガリー人が伝統文化を大切にしながら生活をしています。今回はカロタセグ地方にある小さな街に数日間滞在しクリスマス祭りに参加します。貴重な体験であり、また留学しハンガリー語を学んでこそ出来る体験だと思うので今からとても楽しみにしています。
 留学生活は三分の一が終わりました。残りの期間も充実した日々を送れるように全力でがんばって行きたいと思います。もし街で見かけたら気軽に声かけてみて下さいね。

(みやはら・こうじ)