これまで、「パプリカ通信」や「ドナウ通信」などの在留法人向けメディアがありましたが、その両者とも昨年で廃刊となり、在留邦人の動向を伝える媒体がなくなりました。そこで、新たにハンガリーに在留される邦人の動向やニュースを幅広く伝える雑誌を創刊することにしました。
 世の中、かなりの部分が電子媒体で処理される時代になってきましたが、やはり手にとって読める昔ながらの印刷媒体は、情報伝達の手段としてその役割を失っていないばかりか、ますます貴重なものになっています。すべての在留邦人を対象とする非営利の雑誌の発行は容易ではありません。実際、このような雑誌の発行は近隣諸国では見られません。しかし、ハンガリーでは20年近くにわたって「ドナウ通信」が発行されてきた歴史があります。そうした経験を活かして、息長く、この雑誌を継続して行こうと考えています。
 1990年代初めの頃はまだ在留邦人数も百名前後で、ハンガリーの邦人社会は小さな社会でした。商工会も日本人会も補習学校も、渾然一体化した集合体として存在してきました。ところが、ハンガリーの開国とそれに伴う日本企業の大量進出、さまざまな目的を保有した個人の到来によって、ハンガリーの邦人社会は量的のみならず、質的にも非常に多様になってきました。百名程度の社会であれば、ほとんどすべての邦人が互いに顔見知りになることは難しくありません。実際、ハンガリーの邦人社会も、長い間、そのような状態が続いてきましたが、1990年代の後半から始まった企業の進出、個人事業主や多様な個人・留学生の到来で、牧歌的な邦人社会の時代は過ぎ去ってしまいました。
 今、実にさまざまな分野で、またブダペストだけでなく地方の街で、日本人がハンガリー社会の中に溶け込んで生活し、活躍しています。国際的に活動する日本企業は良く知られていますが、地道にハンガリー社会に貢献している邦人の生活や活動は知られていません。そういうところにも目を向け、光を当てて、その経験を共有していくことも大切なことだと考えます。
 また、ハンガリーの勤務や生活を終えて帰国した人々、あるいは日本にいながらハンガリーとの接点を持ち続けている人々も多くいらっしゃいます。そういう人々の近況やハンガリーとの関わりを知ることも、当地に生活する者にとって貴重な知識・知恵となると確信します。
 こうした雑誌の性格上、当地に長く在留されている人々の力をお借りしなければなりません。とりあえず、出発時点での編集委員として、東口美登里さんには在留邦人紹介を、飯尾欽哉さんには運動サークル情報を、そして桑名一恵さんには留学生・文化情報を担当してもらうことにしました。実際にはこれらの編集委員を通して、さらに多くの方々に情報を提供していただいたり、ご支援をいただいたりしています。今後、雑誌がカバーするネットワークが広がるにつれて、編集委員の数や担当分野を広げていくことが必要になります。お互いが知恵を出し、自らのネットワークを共有化することで、ハンガリーに在留する邦人のかなりの部分をカバーするネットワークが出来上がることを期待したいと思います。近日中には、本誌のHPも立ち上げる予定でいます。邦人社会の情報が適宜、周知されるような媒体としても、このHPを活用したいと考えています。
 本誌創刊にあたっては、本誌発行の趣旨に賛同される方々の支援を受けています。ハンガリーの日本人社会に貢献している人々の力を借りて、今後とも、幅広く、あらゆる人々の力を借りて、本誌の改善に努める所存です。皆様方の厚いご支援をお願いします。
2009年1月15日