ハンガリーに来るきっかけになったのは2年前のぎふ・リスト音楽院のマスターコースでした。そこで現在のヴァイオリンの先生であるヴィルモシュ・サバディ先生に出会いその音楽の素晴らしさに触れました。そして私自身が外国自体に興味があり、好きな音楽を学べてしかも外国に行けるというのは素晴らしいチャンスだと思い、わくわくする気持ちを胸にハンガリーに来ました。
 そして一年目、ハンガリーに着いてからは早速、地図やガイドを持って色んな場所に探検しに行きました。王宮や国会議事堂が見えるドナウ川沿いを歩いて自分は本当にいま外国にいるんだ!と実感し、すぐにブダペスト市内の観光名所はほとんど回り、ウィーンやスロヴァキアなど外国にも行きました。スロヴァキアなんて一生行くこともない縁のない国だと思っていたので、旅行して素晴らしい自然やお城を見た時には感激でした。生活自体も楽しく、スーパーに行っても日本とは並んでいる品物が違うし色々な食材を使っておいしかったり失敗してまずかったり・・。そして色々なハンガリー人やハンガリーで学ぶ日本人と友達になり一緒に遊んだりと、何をしても全ては新鮮で素晴らしく楽しく思えました。
 しかししばらく時間が経って冬頃からヴァイオリンの勉強のことでとても悩むようになりました。なぜなら私は同じ学校で学んでいる他の学生達より音楽の知識も経験もなく、ヴァイオリンの実技の方も不十分だと感じたからです。他の学生はとても勉強熱心かつ自分のコンサートを開いたりコンクールを受けたりなど目的がしっかりしていて、向上心もあり努力も怠らず音楽や自分と真剣に向きあっている人達ばかりなのです。それに比べると自分は外国に行ってみたいという勢いだけで来たものの内容が伴ってないことに気づき悩みました。
 それからはなんとか少しでも上達しようと練習の仕方や生活を変えてやってみるのですが、全く自分の思ったように行かず逆に悪くなっていくような気がして、自分は何のためにわざわざ留学しているのか、本当にヴァイオリンの勉強をしたいのかといった考えがずっと頭のなかをぐるぐる回りました。また冬はとても寒く私は市内から少し離れた場所に住んでいるのですごく雪が積もっていて長時間外にいるとすごく寒く、一度扉が氷ついて開かずに凍えて日本の大阪では体験できないようなハプニングもあり大変でした。
 そして春になると雪が溶けてきれいな緑と花に街が包まれる暖かい季節になりみんな活気づきます。こっちの春はとても爽やかで気持ちが良く散歩に行ったり友達と会って話しているうちに気持ちも明るくなってきました。せっかく留学して貴重な体験をしているのだからあまり堅く考えすぎず、いま目の前にあることに関心を持ったり楽しんだりすることも思えるようになりました。
 さらに初夏になると学生達の卒業コンサートが多くなってきます。コンサートはどれも本当に心に残るような演奏ばかりで、その素晴らしい理由は演奏の上手さではなくそれぞれ演奏者が頑張って時間をかけてきた証だからだと思いました。そういったものは短い時間では手に入らないし自分もうまくいかなくても、現状を楽しみつつ少しずつ前進していくことが大事だと気づきました。
 いまは留学2年目でリスト音楽院のマスターコースに入り授業や練習で忙しい日々です。まだ自分の勉強はまだ始ったばかりです。これから自分が理想とする音楽に近づけるように色々なことに挑戦して、またハンガリーでの生活を楽しみつつ頑張っていきたいと思います。