私にとって「第九」と言えば、やはり『よろこびの歌』です。小さい頃から音楽が好きで、ピアノを習っていたり、中学時代にはブラスバンドでクラリネットを吹いていたりしたこともあり、クラシック音楽は身近なものでした。「第九」の楽曲全てを聴いたのは大人になってからですが、このあまりにも有名なフレーズは、いつの間にか聴いたことのあるものになっていました。
 私は、2008年4月にハンガリー・ブダペストに来ました。派遣教員としてブダペスト日本人学校へ赴任するためです。数年間の期限付きのハンガリーでの生活ですが、「音楽」が身近に感じられる場所へ赴任できたことは、とてもうれしい出来事でした。しかし、日本と同様、こちらでも当然仕事は忙しく、毎日毎日家と学校の往復です。家に帰ってからも仕事のことが頭から離れないときもあり、くつろぐ時間もそこそこです。学校では、国語や算数などの教科の指導の他に、運動会やドナウ祭などをはじめとする大小様々な行事があります。それ以外にもしなくてはならないことが数多くありますので、心身共に疲れを感じることも少なくありません。それでも、私にとって「教師」という仕事にとても魅力を感じていますし、やり甲斐も感じています。なぜなら、ストレスを感じる以上に、「よろこび」や「楽しさ」などを感じることができるからです。目標に向かって子どもたちと成し遂げたときの「達成感」、つらく苦しい時期を乗り越えて良い結果が出来たときの「充実感」、子どもたちとの何気ない会話の中からでも子どもたちの成長を感じられる「驚きとうれしさ」など、数えたらきりがないほどの「よろこび」「楽しさ」を感じています。それぞれの個性を持った子どもたちですから、子どもの数だけ感じるのです。学校の1年間は毎年同じような流れでも、子どもが変われば全く違う時間を過ごすことになります。毎年どんな出来事に出会うのか、まるで冒険にでるかのように期待と不安を感じながら過ごしています。だから、教師はおもしろいのです。 
 こんな私の教師生活に潤いを与えてくれるものの1つに「音楽」があります。クラシックだけではなく、洋楽や邦楽など様々なジャンルの音楽に興味あります。そして、可能な限りライブを楽しむようにしています。どのジャンルでも「非日常」を味わうことができるからです。忙しくドタバタとした日常を離れて、「もの悲しい雰囲気」に浸ってみたり、「勇敢な騎士」になったつもりで元気になったり、「背筋をピン!」と伸ばしたくなったり・・・。その空間、その音、その空気・・・。会場の雰囲気でどんな私にもなれるような、そんな感覚になることができます。それが楽しくて会場に足を運んで行くのです。
 今回の「第九」では、小林研一郎さんのパワフルな指揮と池田理代子さんのパワフルな歌声から「パワー」を頂きました。あのような大きな舞台の上で、高らかに鳴り響く音の数々を自由に操っている姿がすばらしかったです。ソリストとして、高らかに歌い上げる姿がすばらしかったです。そして、合唱団の方々のまっすぐに飛んできた歌声がすばらしかったです。その迫力を実感することができました。ありがとうございました。