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日本・ハンガリー交流年2009
在ハンガリー日本国大使 伊藤 哲雄

 
 昨年は、日・ハンガリー国交樹立140周年、及び戦後の外交関係再開50周年にあたり、「日本・ハンガリー交流年2009」と銘打って、両国の各地で様々な記念行事が催された。ここハンガリーでは、百を超える数の周年認定行事が開催され、芸術・文化を通して、ハンガリーの方々に日本への理解と関心を大いに高めて貰うことができた。また、この交流年のそれぞれの名誉総裁である秋篠宮殿下とハンガリーのショーヨム大統領が、相互に相手国を訪問するというハイレベルの人的交流も実現した。  
そこで、この誌面をお借りして、両国関係の歴史に残るこの年のハンガリーでの主な出来事について、在留邦人の方々に紹介し、記録に留めることとしたい。
  なお、私がブダペストに着任したのは昨年9月なので、それ以前の行事については、広報文化班長の高水英郎書記官(当時・本年3月帰国)を初めとする大使館員からの情報・報告に基づいて記述したものである。
  交流年は、1月の麻生・ジュルチャーニ両国首相の祝賀メッセージ交換で幕が切られた。そして、こけら落としは、1月の和太鼓ユニット「ようそろ」の公演であった。和太鼓に津軽三味線と篠笛が加わった独特な邦楽の響きは、リスト音楽院大ホールを埋め尽くしたハンガリー人観客を魅了し、周年は順調にスタートした。そして2月には、新しく始まった「日本文化発信プログラム」(JCAT)により日本から派遣された7人のボランティアが、ハンガリー各地で日本語教育及び日本文化紹介の活動を開始し、記念すべき年に、また一つ友好交流の担い手が加わることとなった。この友好ムードを更に高めたのが、4月の「裏千家千玄室大宗匠茶道行事」である。千利休から数えて15代の裏千家家元にして裏千家の現総帥である千玄室大宗匠は、ハンガリーでも広く知られており、周年を祝いシューヨム大統領やシリ国会議長に呈茶を行なった他、エトゥヴェシ・ロラーンド大学で茶道講話とお手前の披露を行った。会場となった同大学の講堂は、臨時席を作る程の超満員で、ハンガリーの観客は、奥深い茶道の世界に触れる貴重な機会に、皆、満足した様子であった。
  5月には、秋篠宮同妃両殿下をハンガリーにお迎えした。これまで、2007年7月に天皇皇后両陛下が公式訪問された他、85年4月には英国御修学中の皇太子殿下が、また94年11月には高円宮同妃両殿下が訪問されており、我が国の皇室はハンガリーとのご縁が深い。当地滞在中、秋篠宮殿下は、大統領ほか当国要人と懇談された他、周年事業の一つである「WA−現代日本のデザインと調和の精神」展を御覧になり、また、自然科学や家禽類の博識者として、動物園や農業博物館を訪問され、更に足を延ばされて、ブガツ市で灰色牛を視察された。こうして多忙なスケジュールをこなされる中、各地でハンガリーの人々と親しく接し、見事な皇室外交を展開された。
  8月には、有名なスィゲト野外フェスティバルで、愛知県の伝統芸能使節団が獅子舞や棒の手と呼ばれる伝統芸能を披露する等、夏も周年行事はハンガリー各地で続けられ、どのプログラムも好評を博した。そんな周年のまっただ中の9月に、私は東京からブダペストに着任した。私が最初に出席した周年事業は、9月下旬の武蔵野音楽大学管弦楽団の演奏会であり、場所は、周年オープニングの会場ともなったリスト音楽院の大ホールだった。リスト音楽院は、当国最高の音楽教育機関で、50名以上の日本人音楽留学生を受け入れている他、周年行事を含め文化行事の開催では日本大使館に多大な協力をしてくれている。この大ホールが、昨年11月より改修工事のため2年間ほど使えなくなったことは残念である。
  また、10月には、周年を記念して、日・ハ両国共同で記念切手が発行された。デザインは、ハンガリーのヘレンド磁器、マチョー刺繍、エリザベート橋、日本の刺繍や茶壺に富士山と、どれも皆素晴らしい図柄である。額面も260フォリントで、日本への絵はがきに貼るのに丁度良いことも人気を博したようだ。
  「ブダペストの日」でもある11月17日、エリザベート橋の点灯式典が行われた。この橋のライトアップ・プロジェクトは、日本で組織された周年の実行委員会(会長:河野洋平前衆議院議長)が、ブダペスト市と協力しながら進めてきた周年行事の目玉である。既に夜間照明が施されているドナウ川の鎖橋や自由橋に挟まれ、それまで通常の街灯だけで暗かったエリザベート橋が、石井幹子照明デザイナーの設計でライト・アップされ、世界遺産のプダペスト中心部の夜景が、訪れる旅行者の目に一層魅力的になった。同日夕刻、ドナウ川に浮かぶジョフィア号の船上で行われた式典には、実行委員会のメンバーである河野前議長や米倉弘昌住友化学会長(次期経団連会長)、石井デザイナーに加え、日本から田中義具理事長初め日・ハ友好協会のメンバーも沢山出席した。橋のペスト側の袂に埋め込まれたプレートには、日、英、ハンガリー3カ国語で、このプロジェクトが日本の実行委員会とブダペスト市の協力で実現したことが明記されており、このライト・アップの完成により、エリザベート橋は、未来永劫に日・ハンガリー両国の友好を象徴する架け橋として生まれ変わった。
  2009年周年締め括り行事は、11月末の新内浄瑠璃と八王子車人形の共同公演であった。本格的な日本の古典舞台芸能にハンガリー人の観客は目を凝らして見入っていたが、公演の最後に、ハンガリー民族衣装に扮した車人形がハンガリー舞踊を巧みに舞う姿は、観客の感動と笑いを誘い、ハンガリーでの周年の最後を飾るに相応しい友好ムードを醸し出した。
  12月初め、ショーヨム大統領が訪日され、私も、その訪日日程に同行する機会に恵まれた。天皇陛下及び鳩山総理を始めとする日本の要人との表敬・会談を済まされた後、自然環境保護に関心が高く、また、山歩きが趣味で健脚で有名な大統領は、富士山近辺を散策された。当日は温かく日本晴れで、富士山も終日その美しい姿を見せて大統領を歓迎した。こうして、10年振りとなったハンガリー大統領の訪日は、無事成功裏に終わり、周年行事の歴史的フィナーレとなった。
周年行事については、
・大使館のホームページ www.hu.emb-japan.go.jp/2009/
・館員日誌 www.hu.emb-japan.go.jp/jpn/annai/diary.htm  も是非ご覧下さい。
 
 

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