Topに戻る
 

 
 
 
     
 
ニュースコンサート自己紹介
 
     
 
 

 

カーロリ大学日本語プレゼンテーションコンテスト
カーロリ・ガシュパール大学 
後藤 将太


 

 題名だけを見ると、何かちょっと本格的なイベントかのように感じるかもしれないが、なんのことはない自分の勤務先の大学での授業の一環として行っているクラス内の発表会である。しかし、これをやることにはとても深い意味があると思っているし、上記カーロリ・ガシュパール大学に赴任して以来3年間これを続けてきて、非常に大きな成果があったと感じている。
 私のこの大学での仕事、つまり日本語の授業は、かなりやりがいのある仕事で、それぞれどのクラスの授業も楽しみながらやれているのだが、特にこのプレゼンテーションコンテストをさせるクラスの授業は、1年の中で特に楽しみにしていることである。だから、この機会をお借りして、このプレゼンテーションコンテストの中で特に印象に残った発表をいくつかご紹介したい。まず、このプレゼンテーションコンテストの概要をご説明する。本コンテストは本大学の秋学期の通常授業期間、つまり9月から12月の間に行われ、3年生たち(入学前からの既習者である2年生も含む)が履修する「会話5」と呼ばれているクラスで行われている。
 最初に、クラスの中でいくつかのグループを作り、各グループ内で協力しあって準備をする。そしてコンテスト当日、日本人ゲストの方々と私による審査員が、最もよい発表をしたグループを選ぶ。
 この期間コンテストは2回実施され、使用している教科書に沿って第1回目は「教育」をテーマに、第2回目は「住宅」をテーマに各グループがプレゼンテーションをする。カーロリ大学の日本学科の教育目標の一つとして「ハンガリーのことを日本語を使って説明できるようになる」というのがあるので、それぞれのグループの課題は、ハンガリーで作られた「データ」をもとにハンガリーの現状を説明するということである。
 最初にご紹介するのは、「教育」について発表したグループの中で最も高い評価を得たものである。
 以下のデータを見ると、カーロリ大学の文学部の中で、心理学専攻が入学希望者、学生数ともにトップで最も人気がある専攻であることがわかる。日本学専攻は英文学専攻に次ぐ3位で、この5年間で入学希望者、学生数ともに増加し続けており、人気が高まっていることは明白である。
 実は、このグループがクラスで1位に選ばれた決め手となったのは、最後のまとめの言葉だった。
 「日本学の人気が高くなると、個人的にはライヴァルが増えて大変になるけれど、もっとたくさんの人に日本のことを勉強してもらって日本の魅力を知ってもらいたいです」。
 次にご紹介するのは、「住宅」について発表したグループの中で最も高い評価を得たものである。
 一番上の図は、ハンガリーの主要な都市の平均的な家賃を示したものである。ハンガリーの東部は比較的財政状況が厳しいという話をよく聞くが、この図を見ると、ハンガリー第2の都市であるデブレツェンは別として、東部の都市の家賃が比較的に安いことから、ハンガリー東部の財政事情がうかがえる。
 おもしろいことに、二番目の図では比較的に家賃が安い東部のミシュコルツの寮費の平均が最も高く、逆に平均家賃が最も高いブダペストの寮費の平均は割安になっている。このことから、財政的に厳しい地方都市が大学寮などの公的機関になかなか資金を回せないという現状も垣間見える。
 このグループの発表の良かったところはもう一つあり、それは学生寮に住んでいる人が寮生活の利点を話し、アパートを数人でシェアして住んでいる人がその利点を話して「発表のまとめ」としたことである。

次に、日本学専攻の会話の授業の中の最上級クラスである「会話8」と呼ばれている授業の中でも、図やグラフを使いながらプレゼンテーションをするという活動をしているので、その中でも最も興味深いものを番外編としてご紹介させていただく。
 一つ目のグラフで「年間一人当たりの純アルコール消費量」でハンガリーは世界第8位であり、ハンガリー人がいかに酒好きの国民であるか、ということがわかる。因みに日本はこのデータでは72位。
 日本人も酒好きな国民だと思われるが、この点でハンガリーには遠く及ばないようである。
 そして、このグラフで注目すべきなのは、やはりユーラシア大陸の北部に位置し、厳しい寒さからアルコール度の強い酒類を好んで飲む国々が上位を占めているということである。
 二つ目のグラフは、よく飲まれているアルコール飲料の種類のハンガリーと日本の比較である。ハンガリーではパーリンカなどの高アルコール度の酒が好まれているので、蒸留酒が34パーセントを占めるということは容易にうなずける。日本でも焼酎などの蒸留酒が人気なので、この割合が52パーセントとなっているが、この二国のアルコール消費量の差は、日本ではワインがたった4パーセントにすぎないのに対し、ハンガリーでは30パーセントであることから生じると考えることもできるだろう。
 このように、本大学でのプレゼンテーションを行う授業は、学生たちの日本語力向上に役立ったばかりでなく、私や審査員として来てくださった日本人のゲスト審査員の方々がハンガリーという国を知るためにいろいろな興味深い情報を得ることにも大いに役立ってきたのである。
 カーロリ・ガシュパール大学日本学専攻では、プレゼンテーションコンテストの審査員をしてくださる日本人ゲストの方を募集しております。このコンテストに参加されれば、普段の生活からはなかなか知ることができないハンガリーの一面のなにかしらをきっと発見できるはずです。学生たちも多くの日本人の方が来てくだされば、きっともっともっとがんばってくれるでしょうから。

 
 
 
 
 
 
 
 

 


(ごとう・しょうた)
 
 

Web editorial office in Donau 4 Seasons.