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ハンドボールのコーチングを学びに
センメルヴァイス大学体育学部聴講生
井上 元輝

 
   僕は筑波大学大学院博士前期課程を休学して、現在センメルヴァイス大学体育学部の聴講生という立場で留学をしています。そもそも留学に興味を持ち始めたのは、大学4年生時に卒業論文としておこなった、ハンドボール競技におけるヨーロッパと日本とのプレーを比較したことがきっかけでした。
  日本のハンドボールといえば、宮崎大輔選手や2008年の北京五輪アジア予選の際の中東の笛で話題に挙がることもありましたが、まだまだマイナースポーツですし、オリンピックに関していえば、1988年のソウル五輪以来出場を逃しています。映像を見るだけでもヨーロッパのハンドボールのレベルは、日本のそれとは全く違っています。選手を引退した後に指導者を志すにあたって、やはり本場であるヨーロピアン・ハンドボールを肌で感じるべきだろうと思うようになりました。
日本の指導体制は学校部活動が主体であるため、なかなか一貫した指導がなされていないという印象が強いです。そこで留学を通して、ヨーロッパの一貫したトレーニング体制を学んで、自分自身のコーチング哲学の一助を得たいと思いました。
  ハンガリーにコーチング留学することを決めた理由は、世界ランキング4位だということ、ハンドボールのコーチングで日本人がまだ来たことがないことです。世界ランキングが上位の国々の中では人口が少ないので、一貫したトレーニング体制があるのではと考えました。また、ヨーロッパの中では比較的にハンガリー人の体が小柄で、日本に似ていると考えたからです。
  現在は大学のハンドボールの実技と座学の授業を聴きながら、ブダペストにある中学生年代の選抜チームの練習を見学させてもらっています。自分自身もハンガリー3部リーグに所属するセンメルヴァイス大学のチームに参加させてもらいながらプレーもしています。また、センメルヴァイス大学には、国際オリンピック委員会が認めているインターナショナル・コーチング・コース(ICC)があって、ICCのハンドボールを英語で学ぶことができます。全部で2年間留学する予定ですが、最後の年にはICCのライセンスを取得したいと考えています。2年という期間は、1シーズンのトレーニングを2回見たいと考えたからです。
  ブダペストには7月から滞在していますが、一番苦労していることはやはり言葉です。大学の先生や一部の学生とは英語で交流出来ていますが、英語の話せない中学生年代、小学生年代のキッズの子たちとコミュニケーションを取るには、ハンガリー語がかかせないとこの4ヶ月で痛感しました。自分がプレーするぶんには、簡単な英語やジェスチャーだけでなんとかなっていますが、いざコートの中に入って日本式のトレーニングを教えてくれと言われたら困ってしまします。そこで年明けからハンガリー語の教室に通うつもりです。また、ICCのために座学を英語でこなせるようにもならなければならず、日々言葉とは戦わなければなりません。
  まだ4ヶ月しか経っていませんが、日本を出てみて日本の良いところ悪いところが少しずつ見えてきました。それはハンドボールに関しても同じです。体型的に劣る日本人がヨーロッパ諸国の大きい相手にどのように戦っていくかということを常に考えていますが、日本人の誠実さや勤勉さ、俊敏さといったものが武器になってくるだろうと感じています。しかし、育成理論や細かい方法論はこちらの方が優れているので、そこを上手に吸収して日本に帰国したいです。
  ハンドボールの話ばかりになってしましましたが、ハンガリーには色々な分野の日本の方がいらっしゃいます。日本にいた頃には絶対に関わらなかったであろう、音楽、ダンス、医学など他の分野で頑張る日本の方と知り合うことができて、とても良い刺激になっています。それに困ったことがあれば気軽に相談させてもらえますし、ブダペストは住み心地の良い場所になってきています。まだまだ始まったばかりの留学生活ですが、この環境で学べていることを両親に、支えてくださっている全ての方々に感謝しながら、初志貫徹していきます。
(いのうえ・もとき)
 
 

Web editorial office in Donau 4 Seasons.