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留学日誌
センメルヴァイス医大4年
森山 広太郎
日本では梅雨の長雨が続く頃、ハンガリーではカラッと乾いたヨーロッパ独特の暑さがやってきて、そろそろ海や山が恋しい季節です
ハンガリーでの生活も5年を終えて、秋からは5回生になり、改めて自身の置かれた環境や周りの人々との巡り合わせに感謝する毎日です。留学経験が全くなく、海外旅行すらしたことがほとんどなかった私にとって、ハンガリーで医学留学は大変リスキーなものでした。医学の勉強はもちろん簡単なものではないことは覚悟していましたし、初めての海外生活に不安はもちろんありました。それでもこの留学が自分の人生にとってかけがいのないモノになることは予感していましたし、年月を重ねてその予感が実際のものになったことに大変充実感を得ています。
ハンガリーでの生活は未だに真新しいことばかりです。この国では宗教、文化、言語、政治、教育、食事、生活習慣など様々なものが日本とは違います。日本にあるものもあればそうでないものもあり、日本のものより優れているものもあればそうでないものもあります。時には言葉の壁で周りから孤立しているように感じ、食事が口に合わないことなどから精神的にストレスを抱えてしまうかもしれません。しかしそのストレスは異文化に出会った時には誰もが乗り越えないといけないものであり、自身の成長を促し新たな世界に一歩を踏み出すチャンスでもあるのです。日本にないものに触れた時に、ストレスとして感じるだけでなくそれを受け入れて楽しむことができるかどうかで海外生活する充実度は変わってきます。異文化という扉の鍵はいつもなんでもそれを楽しむことなのです。
また、そうした日本とは異なる環境で暮らしているハンガリーの人々と接することもまた大変意義のあるものです。多くのハンガリー人は日本と日本人に対して友好的で、彼らが日本という国を本当に愛してくれていることに驚かされるとともに感謝でいっぱいです。私の友人の中にも日本文化に敬意を払い、より深く日本について学びたいと努力している方がたくさんいます。彼らのそのような熱意に触れる度に、私ももっとハンガリーの文化について学ばなければならないと思わされます。同時に彼らは日本と日本人の「ここがおかしい」、「ここが良くない」といった意見も持っていて、日本でずっと生活していたのでは得られない外国人から見た日本という貴重な意見も聞くことができます。日本人では普通だと思われることがハンガリーではそうではなかったり、ハンガリーで普通のことが日本人からすると新鮮であったり。日々日常がカルチャーショックの連続です。そういった経験を通して、日本人留学生は精神的に成長できるとともに、日本人であるという固定観念にとらわれない物の見方を身につけることができると思います。
近年の日本人留学生の減少傾向は、日本と日本人の考え方がますます内向きになっているグローバル化に逆行したものです。諸外国が年々多くの留学生を海外に送り出している一方で、日本人の海外の大学への挑戦意欲はどんどん失われている。日本人留学生の減少は、政治や経済などの分野と同じように、日本が海外から取り残されつつあるという現状の縮図なのではないでしょうか。我々日本人はもっとチャレンジして海外で何かを掴み取る努力をするべきです。より多くの学生が海外留学する意欲を持つことを期待するとともに、これからハンガリーに来る学生達を心から応援したいと思います。日本人も異なる環境でもっと勉強したい、もっと何かを得たい、もっと成長したい。人生において果敢に挑戦していく姿勢こそかつて日本人が持っていたサムライスピリットに他なりません。
「行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例なし。世の中にある、人と栖と、またかくのごとし」。長い人生の中で偶然ハンガリーという国に巡り合うという運命。時間も人も絶えず流れていて、とどまるということはない。ただ楽しめばよろしい、美味しく酒を飲めばよろしい。一献、又一献。麦酒を片手に悠久のドナウの流れを眼下にするとそのようなことを考えるのです。
(もりやま・こうたろう)
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