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寄り道留学
一戸 宏介
ブダペスト工科経済大学経済学部 |
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2013年の春学期から、ブダペスト工科経済大学で経済、経営の勉強をしています。一年前はまさか自分がハンガリーで留学することになるなんて思ってもいませんでした。きっかけは、指導教員の一言でした。「若いうちは寄り道をしなさい」。この一言で僕はハンガリーへの留学を決めました。
私は途上国の開発、特に東南アジア地域における貧困問題に関心があり、長期休暇の度に東南アジアに行っていました。大学3年生の後期から留学することを決め、行き先はフィリピンを希望しました。そこで指導教員に相談したところ、「君はアジアしか見たことがないでしょ。それでは考えや価値観が偏ってしまうよ。 |
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一度ヨーロッパにでも行ったらどうだい?」と言われました。正直当時の僕はヨーロッパになど全く興味はありませんでした。「ぼくはいまヨーロッパから学びたいことは特にありません」と言うと、指導教員は「それが大切なんだよ。ゼロから自分の力でなにかをみつけてきなさい。こういう寄り道は若いうちしかできないよ。その代わり、するなら全力で寄り道してきなさい。」この言葉に心を動かされ、私はヨーロッパでの留学を決意しました。こうなったら今まで全く気にかけたことのない国で留学をしようと決め、イギリスやフランスなどの留学先としてメジャーな国ではなく、ハンガリーという日本人にあまり馴染みのない国を選びました。
私の留学先であるブダペスト工科経済大学は、1782年に創立された歴史ある大学で、ハンガリーでトップレベルの教育水準を誇ります。そうなると、当然協定校も各国のトップレベルの大学となり、優秀な生徒が世界中から集まってきます。そして授業はそんな各国の秀才たちに囲まれながら受けます。授業の内容は一般的な経済、経営に関するものなのですが、教室内にはヨーロッパ人、アメリカ人、アフリカ人、アジア人がいます。当然議論は一般的な事象に留まることはなく、次から次へとグローバルな話題に移っていきます。ヨーロッパは現在このような経済問題を抱えているけど、アメリカはどうなんだ?アフリカとアジアの経済を比較して、なにが共通点でなにが相違点なのか?そんな議論がされているときに、不意に「ところで日本はどうなんだい?」と振られることもあり、慌てて僕の知っている限りの知識をもとに、考えを述べます。日本人の留学生は私一人なので、出鱈目なことは言えません。ブダペスト工科経済大学の日本代表として、授業に臨んでいます。
私の趣味の一つに散歩があります。散歩というものはとてもおもしろいものです。普段バスやトラムで何気なく通り過ぎてしまう道も、自分の足でゆっくり歩いてみると新しい発見があります。ブダペストの最大の魅力は、歴史を近くに感じながら生活できることだと思います。みなさんご存知のように、通りや駅、広場の名前には歴史上の人物の名前がよく使われています。そういった一つ一つのものに注意しながら散歩をし、気になることがあれば家に帰ってから調べます。なんだかプチフィールドワークをしているみたいでとても楽しいです。これからはどんどん暖かくなってくるので、散歩がより一層楽しくなりそうです。
ハンガリーの国民性に、物を大切にする習慣があります。ちょっと街に散歩に出てみると古着屋や中古レコードショップ、骨董品のお店など所謂セカンドハンドの商品を扱うお店がたくさんあります。私はとにかく古いものが大好きなので、そういったお店にたまに顔を出して、掘り出し物を見つけては購入しています。なかでも骨董品屋さんは非常に興味深いです。オーナーさんに聞いたところ、店内の商品はフリーマーケットで買い付けたものと、買い取りの依頼を受けたものだそうです。そんな商品を実際に手に取ってじっくり眺めるのが、私のいまの楽しみの一つです。
ブダペストでの生活が始まって、もう一ヶ月以上経ちました。「寄り道留学」ということで、到着直後は一体自分はここで何を学ぶことができるのだろうと不安な気持ちでしたが、そんな不安も今は全くありません。すでに具体的に何かを掴んでいる訳ではありませんが、絶対になにか見つけることができるという確かな感触があります。帰国までの残り4ヶ月でどんな発見があるのかとても楽しみです。
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(いちのへ・こうすけ) |
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