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不安から出発したハンガリー留学
リスト音楽院大学院ピアノ科
十川 安里 |
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私は今リスト音楽院のマスター2年に在籍しています。リスト音楽院には、5年前パートタイム生として入学しました。リスト音楽院で学びたいと思ったきっかけは、日本で通っていた大学2年の時、客員教授として今のピアノの先生でもある、ファルヴァイ・シャーンドル先生にお会いした事から始まりました。1年に2、3回と、とても少ないレッスン回数でしたが、教えて頂くたびに先生がいらっしゃるハンガリーで、音楽を学びたいと思うようになりました。そして、2007年9月に現地で受験を受けて、リスト音楽院にパートタイム生として入学しました。現地の受験月は7月くらいだと思うのですが、私は皆さんより2ヶ月遅い9月に受験しました。ですので、リスト音楽院の入学も決まっていない8月、母と2人ハンガリーに到着した時は不安でいっぱいでした。
ハンガリーには、知り合いが誰もいませんでしたので、まず住む家を紹介してもらう為リスト音楽院の事務所を訪れました。しかし、まだ夏休み中で空いておらず、どうしようかと道をウロウロしていたところ、リスト音楽院の学生さんに助けて頂きました。今、思えば笑えるエピソードですが、当時は右も左も分からず勢いだけで来てしまったハンガリーで、日本人の方に助けて頂き、とてもホッとしたのを覚えています。 |
そして、9月の入学試験も無事終わり、パートタイム生としての1年目が始まりました。パートタイム生は、ハンガリー語等の授業はありますが、基本レッスンのみで、室内楽は希望を出せば勉強できるというシステムでした。
前期、後期とも実技試験というものがありませんので、1年に1回はコンサートが出来るように自分で目標を立てて過ごす毎日でした。レッスンに持っていく曲もコンサート用のプログラムを意識し、自分で考え持っていきました。
でも、曲を持っていくペースが日本の大学よりも早く、日々譜読みに追われていました。先生に言われたこともすぐに出来なかったり、テクニックのなさを痛感したりと自分の思うようにレッスンが進まなくて泣くこともたくさんありました。
幸いハンガリーは日本人の留学生がたくさんいますので、お互いレッスンの事など話す事で色々と発散でき助けられ1年目が終わりました。2年目からは、自分のやりたい事もはっきりしてきましたので、レッスンもハンガリーでの生活も、とても充実していました。
そしてパートタイム生としての4年目、本当は日本に完全帰国しよか、どうしようかと悩んでいたところ、先生からマスターを受けてみたらと言われました。その年、同期の友達がすばらしい卒業演奏会をして、立派にマスターを卒業していくのを近くでみていて、私もマスターに入りたいと考えていた所だったので、受験することにしました。
そして、リスト音楽院で勉強するようになって5年目の2011年9月に、マスターに入学しました。パートタイム生の時とは違い、前期、後期の試験もありますし、アナリーゼや音楽史等の実技以外の授業も増え、とても忙しい日々をおくる事になりました。ピアノの練習時間も、授業と授業の合間のフリーの時間を見つけ練習しなくてはいけなかったので1年目の前期の試験が終わる頃、忙しすぎて目が回りそうでした。でも、マスターに入った事で、視野がとても広がったと思います。室内楽も色んな生徒と組み、卒業演奏会などにも一緒に出演させてもらったり、人前で演奏する機会が増え、とても楽しかったです。室内楽等でのコミュニケーションは、ほとんど英語ですが、一緒に演奏するにあたって細かいニュアンス等が、うまく伝わらなくて困ったこともありました。でも、どうやったら伝わるのだろうかと自分で考えるようにもなったので、とても鍛えられました(笑)
私は、あと1年で完全帰国です。この5年間、色んなことがありましたが、とても貴重な時間をハンガリーで過ごしました。そしてあと1年、私は悔いのないように、しっかりと勉強をして卒業したいと思っています。
私は音楽とは一生勉強だと思っています。ハンガリーに留学して、たくさんの事を学びました。自分が何を勉強したいのか自分の先生から何を習得したいのか、それさえはっきりと目標があれば、どんな事があってもピアノを続ける事が出来るという自信。そして、何より音楽を心から楽しむ事。よく、レッスンで少しくらいのミスは問題ないんだよ。それより、その曲を楽しんで演奏しないと聴いている人に何も伝わらないよ。と言われます。この言葉を一生忘れないように、これからも楽しくピアノを演奏していきたいと思っています。 |
(そがわ・あんり) |
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