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ピックアップインタビュー  
ハンガリー・ダンスアカデミー 丸山 穂高(まるやま ほだか)
聞き手:桑名 一恵


 
Q) ダンスやバレエを始めたのはいつ頃?きっかけは?
A) 妹が習っているのをみて僕もやりたいなと思い6歳からバレエを始めました。やればやるほど、「踊るのが楽しい」と感じるようになりのめり込んで行きました。バレエスタジオに所属して文化センターなどで発表したりしました。
Q) 本格的に、この世界を目指そうと思った理由は。
A) 12歳の頃にアリメカで行われたYouth America Grand Prix というコンクールに出場し、世界中のダンサーを観て憧れました。特に同年代からは大きな刺激も受けましたし、プロダンサーの演技を見て「こうなりたい」と、はっきり目指すものが見えた時期でもあります。
Q) ハンガリーへ決めたのはなぜ。留学の目的などを聞かせてください。
A) 高校卒業後、海外で勉強したいと強い思いがありました。卒業を前に受けた京都で開催されたバレエコンクールで、現在通って学校のスカラシップ(奨学金生)の資格を頂きました。同時期にイギリスへの可能性も出てきたのですがハンガリーの学校が国立だった事や国自体も過ごしやすそうな印象があったので、同年7月に実際に同校のサマーコースに参加し、周りの環境も実際に自分の目で確かめてから入学を決断しました。
Q) いつからハンガリー・ダンスアカデミーに在籍されて、実際どういったことを学ぶの
しょうか。難しい面、興味深い面、日本との違いはなんでしょうか。
A) 2016年9月からです。学校にはバレエ科、モダン科、ハンガリアンダンス科、教師過程の4つのプログラムあります。僕はバレエ科に入っており、バレエ、パドドゥ(男女ペアで踊る)、モダンダンス、インプロビゼーション、社交ダンスなどを学んでいます。最初は、英語もあまり通じないと聞いていたので、とにかく何をするのかドキドキしながら対応していたのを覚えています。今まで社交ダンスは踊ったことがなかったので、習得できる良い機会だと思う反面、やはり難しく踊り切るには、まだまだ乗り越えていけないとならない壁がたくさんあります。基本的に男女別クラス。パートタイム生である僕の場合は朝にバレエのレッスン、その後「レパートリー」と言って、振り付けの付いている作品やモダンバレエ・即興ダンスなどのレッスンがあります。「パドゥドゥ’」と言って女の子を持ち上げて踊るようなレッスンもあります。ここまでが午前中のプログラムで、午後からは自主トレになり、筋トレなどを取り入れた体作りに励んでいます。僕は今9年生と言う最終学年なのですが4名の外国人クラス(日本人2名、イタリア人2名)にいます。
ハンガリー人やヨーロッパの同学年のダンサーたちは、とにかく立っているだけで綺麗です。特にこの国立バレエ学校の生徒は1年生の頃から基礎を丁寧に教えてもらっているせいか、本当に立ち振る舞いが綺麗で羨ましくなります。立って表現する各ポジションをとること一つとっても、そのポジションに入れていく事だけでも技術が必要で中々決めていけないものが、こちらの皆さんは、すっと形をとっていく事が出来る。体格の違いもさておきながら、どれだけの基礎を身に付けているのかというところに目が行ってしまいます。
Q) ハンガリー国内外で公の場での発表の機会や、私たち在住者が鑑賞できるような公演などはありますか。
A)  学校内にも舞台がありパフォーマンスの機会は多いです。またMÜPAやVárkert Bazár、ブダペストを抜け出して地方都市にも公演に出かけたりします。もうすぐシーズンも始まりますが「くるみ割り人形」では、昨年「ロシアの踊り」という重要な役を踊ることも出来て、更に向上心が高まりました。バレエアカデミーでは、僕たちに様々な役割を与えてくれて練習の成果を実際に披露することが出来るので、その度に何が大切なのか、これからの課題なども含めて確認出来る良い機会でもあります。勿論、与えられるだけでなく僕たちは、それに応えられるように日頃からレッスンを重ねて行くのですが心身共に成長していける良いチャンスだと思っていますし、卒業後のプロダンサーとしての道に向かって行く一つの過程でもあるので、一瞬一瞬を逃さないように心がけています。一般の方に見てもらえるようなプログラムもあり、公演内容は学校のホームページやFacebookでも舞台の情報が載っていますので見て頂いて足を運んで頂けたら、とても嬉しいです。
Q) ハンガリーのバレエや現代舞踊など指導・技術面などの大きな特徴や日本の違いはありますか。
A)  学校では「ワガノワメソッド」で教えてもらっています。僕の担任はロシア人なので英語クラスを受けていますが、ハンガリー人の先生の時には基本ハンガリー語で少し英語を混ぜて話してくれます。とてもポジションに厳しく、対応に苦労していますが、その分、形、基礎をしっかりと叩き込んでくれるのでとても勉強になります。
また面白いことに先生方が、たまにバレエの動きをハンガリー語で例えて言ってきます。例えば、くるっと回る動きがpalacsintaの様なので、その動きを「パラチンタ」と名付けて、「そこからパラチンタして〜」と指示してきます。確かに想像しやすいのですが、どうしても笑みがこぼれてしましますね。
バレエやダンスレッスン以外にも例えば、他の学生たちは音楽史やスポーツ生理学などの体の仕組みについても学び、実技だけでなく更に幅広い知識を習得し、演技の幅を広げていきます。僕は、体作り中心で体幹を中心に鍛えています。
Q) ハンガリーの印象や住み心地やハンガリー人との交流・文化の違いや語学・食生活などはどうですか。
A) ここに来た時、「芸術の町」だなと感じました。去年、外にピアノが置いてあって普通に歩いていた人たちが、いきなりピアノを弾き始めたのを見て驚きました。また良い舞台が安価で観る事が出来ることを知って、オペラやコンサートにも足を運ぶようにしています。とにかく日本では考えられない状況にびっくりしました。クラスのハンガリー人の友達とも良く遊びますが、最近は温泉に行って全く知らないハンガリー人のおじいちゃんおばあちゃんと会話?することを楽しんでいます。当然、ほとんど理解出来ないのですが、こういう交流がとても楽しく、いい息抜きになります。一人の時間も大切にしています。スタジオでレッスンの後に一人で「無」になる時間を過ごしたり、家でもリラクゼーション出来る環境を作るようにしています。自炊を中心にしていますがハンガリーの食べ物は、どれも美味しくてダンサーである事を忘れてしまいます。殆どの気に入ってしまって食べていますが、中でもクルトゥシュ・カラーチとラーンゴシュが大好きです(笑)。
Q) ダンスアカデミーに来て思うこと。
A) 先生方も親切に接してくれて、自分の質問にも、とても丁寧に答えてくれます。
  ですが、自分から動き出さないと何も得る事はないと感じています。
   自分が動き始めると、周りは本当に、いい方向に導いてくれる事を実感しています。
  アカデミーの立地条件も良く、住む場所も幅広く可能性がある事や、やはりこの国の住み心地の良さが僕自身の決定打かなと思います。ハンガリー人の学校の仲間や留学生も本当に助け合える同志たちですので、何かあれば手を差し伸べてくれます。
  そういったネットワークの良さも、この学校の良い所だと思います。
Q) 今後の目標やプランニングは。
A) 後1年学校で勉強します。今は来年6月に行われる卒業公演に向かってプログラムが 決まりつつあり、配役も決まり始めてきましたので、それに向かって始動しました。
卒業公演では女性ダンサーと踊る「パドゥドゥ」を踊れることになり、これは僕にとっても大きな目標でもありましたので在籍している間に、しっかりと技術を上げて固めて行って本番を迎えられたらと思います。それから、やはり語学力をもっと高めたいかなと思います。バレエの専門用語自体はフランス語やロシア語を使いますが、説明などはほとんど英語を使ってレッスン中のコミュニケーションをとっています。学校でハンガリー語の授業があるのですが、担任の先生がロシア人の先生ということもありクラスでは英語が多いのですので、まずは英語から話せるようになれるといいなという目標があります。卒業後は、クラシックスタイルを好んでいるので、ヨーロッパの中でも特に現在でも大切にクラシック作品が定着し残っているバレエカンパニーで活動をしていきたいと思っているので、ハンガリー国立バレエ団を始め、東ヨーロッパを中心とした各国のバレエカンパニーのオーディションを受けて行きたいと思っています。そしていつか、その所属先で「海賊」や「ドン・キホーテ」を踊ってみたいです。
 
 

 
 
(くわな・かずえ)
 
 

Web editorial office in Donau 4 Seasons.