ご存知の方も多いかもしれませんが、在日韓国・朝鮮人とはどんな人なのか、なぜ日本で滞在しているのか、日本ではどんな生活を送っているのかについて簡単にご紹介させて頂きます。
まず、「在日韓国・朝鮮人というのは何か」から見ていきたいと思います。簡単に説明すれば、植民地時代の朝鮮半島にエスニックなルーツを持つ人たちのことです。なお、在日韓国・朝鮮人はオールドカマーとニューカマーの二つのグループに分けられています。前者は植民地時代の朝鮮半島から無理矢理日本に連れ去られた人のことで、後者は1980年代以降に自分の意思で渡日した人のことです。現在日本で滞在している在日韓国・朝鮮人は二つの集団に属することができます。一つは、「在日本朝鮮人総聯合会」という集団です。北朝鮮を支持している在日韓国・朝鮮人の集まりで、彼らは在日朝鮮人として知られています。もう一つは「在日本大韓民国民団」です。韓国を支持している在日韓国・朝鮮人の会で、彼らは在日韓国人と呼ばれています。実は、初めのころは、前者に属していた人数の方が多かったですが、今は25%対65%の割合で、後者に属している人の数が上回っています。
次に、在日韓国・朝鮮人が日本に住み着くことになった経緯を簡単にまとめていきたいと思います。それは主に4つの期間に分けられています。まず、日韓修好条規が発効した1876年と、第二次日韓協約 によって大韓帝国が日本の保護国(植民地)になった1905年の間です。続いて、1905年と第二次世界大戦の始まりの1939年の間でした。その時期に韓国・朝鮮人は産業労働者としてよりよい生活を求めて大勢渡日しました。三つ目の時期は1939年から1945年まで、若しくはサンフランシスコ講和条約が発効した1952年までです。そして最後の時期は1950年代から現在までです。戦後に日本に残された在日韓国・朝鮮人の約70万人くらいは当時まで持っていた権利をすべて失いました。また、人権に関していえば、1991年に日本の政府はマイノリティを管理するために在日韓国・朝鮮人に対する特別な扱いを目的にした法律を規定し、それによって「特別永住者」というカテゴリが生じました。特別永住者というのは、日本人と同等に暮らせる一方、参政権のみは今までと変わらず与えられていない在日韓国・朝鮮人のことです。法務省のページによると去年の特別永住者数は34万8,626人に達しました。
最後に在日韓国・朝鮮人のアイデンティティの多様性について話したいと思います。在日韓国・朝鮮人には4つの世代があります。1世代目は朝鮮生まれで、朝鮮半島への繋がりが強い人たちのことです。2世代目以降の在日韓国・朝鮮人は日本生まれで、大多数は日本の学校に通っていて、日本の社会の中で生きようとしています。自分が日本人なのか韓国・朝鮮人なのかに関しては、2世代目と3世代目はどちらでもないと思う人が殆どです。日本にいると韓国語・朝鮮語が習得しにくい上、たいていの人がいじめにまで遭っているので、両国への繋がりは浅いです。これらの世代では、自分のルーツがどこにあるのかに関わらず、とにかく自分の人生で成功したい人が多いようです。そして4世代目は、日本生まれ日本育ちで、家族・親戚もみんな日本生まれなので、韓国語・朝鮮語が話せないし、自分のことも日本人だと思っている人が多いです。そういう人は、日本人と結婚することにも、帰化することにも全く抵抗を持っていません。しかし、自分のことを日本人だと思っていても、エスニシティの視点から見ればルーツが朝鮮半島にあることには変わりがありません。
現在、在日韓国・朝鮮人が通える学校は二種類あります。朝鮮学校と、一般的な日本の学校です。朝鮮学校に在学している人、又は在学していた人は、朝鮮語・韓国語が話せて、自分が朝鮮半島にルーツを持つ在日韓国・朝鮮人だとちゃんと自覚しています。それから、他の在日韓国・朝鮮人の知り合い・友達もいて、それらの人々と関係を作ることの重要性についてもちゃんと理解しています。つまり、自分が日本では外国人として生きているということを承知しています。一方、日本の学校の在学者、又は在学していた人の中では、青年期まで自分のエスニシティが韓国人・朝鮮人であることを知らなかった人がかなり多いようです。また、もし自分が在日韓国・朝鮮人であることを幼いころから親に伝えられていたとしても、別に韓国語・朝鮮語が話せなくてもいい、韓国・朝鮮名を使用しなくてもいい、自分が韓国人・朝鮮人であることさえわかっていれば、それでいいと言われた人も多いそうです。ですから、彼らは一般的に自分のことを外国人だとは思っていません。しかし、本当のところでは、日本人ではなくて、外国人ですから、アイデンティティと帰属のズレに繋がります。
では、アイデンティティに関する心の葛藤はどうすれば解けるのでしょうか。その問題をめぐって議論した在日韓国・朝鮮人の兄妹がいます。兄の方は現在大学教員で、2004年に日本国籍を取得できました。彼の考えでは、外国籍を維持している人が公務員の仕事などで拒否されることは排除でも差別でもありません。在日韓国・朝鮮人はもし日本人と同等に暮らしたい、参政権など取得したいと思っているのなら、帰化すればいいとのことです。そうすると問題が自動的に解決されると彼は主張しています。一方、妹の方は管理職試験に出願しましたが、外国籍を理由として拒否されました。それで彼女は、東京都を提訴して最高裁まで戦い続けましたが、結局敗訴となってしまいました。彼女は自分の国籍を維持しつつ、日本人と共に同等に生きたいと言っています。彼女の言葉を引用すれば、「ひとりひとりが違うことを大切にする社会」を作りたいそうです。
私の個人的な考えでは、日本人と在日韓国・朝鮮人の両側からの努力が必要だと思います。在日韓国・朝鮮人の中には帰化したい人もいれば、韓国・朝鮮籍を維持しながら日本の社会で日本人と同等に生きたい人もいます。皆それぞれの思考を持っているからこそ、それを尊重し、対応できる社会が必要だと思います。つまり、在日韓国・朝鮮人は、もし自分の国籍を保ちたいのなら、それなりの限界があるということを了承するべきだと思います(例えば、公務員になれないこと)。一方、日本の側からも、もう少し在日韓国・朝鮮人の人権を守る法律を作って欲しいです。でも、最良の解決方法はやはり二重国籍の認可だと思います。
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