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今年のブック・ウィークのハイライト
Kerekes Zsuzsa


 今年6月6日から10日まで、第84回ブック・ウィークと第12回児童書ウィークという祭りが行われた。国内外の出版社220社が参加し、総計147の出店があった。祭りの中心となるブダペストのヴェリョシュマルティ広場をはじめとして、ハンガリーの様々な町で同時にブック・ウィークが行われた。私は18年前の自分の夢を叶えるために6月9日にヴェリョシュマルティ広場のイベントを見に行った。 18年前といえば、私は7歳の子どもで、母に毎日読んでもらった物語を自分で読めるようになって、初めて読書の楽しさを経験した頃だった。その頃の一番好きなお話は「冬のコオロギの物語」(A téli tücsök meséi)だった。バックパックの中に隠れていたため部屋の中に閉じこめられてしまったコオロギは、毎日バックパックのポケットから出てきて、タイプライターを階段にして部屋の窓ぎわまで跳び、冬の景色を見ながら夏の思い出を語る。そして、偶然「夏の島に戻りたい」という一つの正しい文をタイプしてしまうところでお話が終わる。
 この物語を書いたチュカーシュ・イシュトヴァーン(Csukás István)は、子供のための小説や詩を70冊以上書き、ハンガリーの様々な文学賞を受賞した。テレビ化された作品も少なくない。彼の作品の中で特に有名なのは「シュシュという竜」(Süsü, a sárkány)、「ポムポムの物語」(Pom Pom meséi)、「一番小さなウサギ」(A legkisebb ugrifüles)、「硬い帽子とポテトの鼻」(Keménykalap és krumpliorr)である。作者の名前を知らなくても、彼のキャラクターを知らない子供はハンガリーにいないと思う。1936年生まれのチュカーシュ先生の描く物語とキャラクターは、少なくとも3世代の人の心に魔法をかけたといえる。6月9日、チュカーシュ先生とのインタビューを聴きに来た人はみんな自分の大好きな作品を持ってきていて、先生にサインしてもらった。そして、第12回の児童書ウィークのサプライズとして彼の新しい小説が出版された。

 
 
 
 その日のもう一つの大きいイベントはベセルメーニ・ジュラ(Böszörményi Gyula)の大ヒットシリーズ「ルーザー・ラジオ、ブダペスト」(Lúzer rádió, Budapest)の第3巻の出版だった。この小説の主人公は13歳のマルクという男の子で、家族と一緒にブダペストに引越ししてきて、新しいアパートの屋根裏部屋で古いラジオを見つけて、誰も聞いていないと思って放送を始める。話題にのぼるのはお父さんの新しい職場、ゴシック・ファッションが好きなお姉さんとの問題、隣に住んでいる怖いおばあちゃん、家族の借金、そして屋根裏部屋の窓から見える誰も住んでいないはずの教会の居住者。ベセルメーニ先生の小説にはよく実在する建物、道や人物が描かれている。
 ベセルメーニ・ジュラは、11年前に、ハンガリーのハリー・ポッターとも呼ばれた「ゲルゲイとドリームキャッチャー」(Gergő és az álomfogók)という子供向けの小説を書いてから有名になった。ドリームキャッチャーの全13巻には、ハンガリーの伝統や神話と現代の世界を混ぜ合わせて作られた新しい世界が描かれている。現在の読書が好きじゃない子供たちの興味を引いたこのシリーズは、教員にも親にも賞賛された。ベセルメーニ先生は自分のファンと接することを何よりも大事にしている。彼のことばを引用すると「私はまだ大人にならずに、ずっと子供のままでいるので、一番話しやすい相手は子供なんだ」とのことである。10年前からサマーキャンプ、短編小説大会、ロールプレイングゲームなどの活動もやっていて、子供の文化を色鮮やかにするための基金も設立した。
私も11年前、彼の小説を読み、彼が作った世界に憧れて、ベセルメーニ先生に初めて会いに行った。彼との友好のお陰でたくさんの友達や思い出が出来て、数え切れないほどの小説を読んで、文学を好きになった。
 私は今、こういった作家達の影響を受け、児童文学の研究をしている。文学や芸術が盛んな国はもちろんたくさんあるが、ハンガリーの場合は面積が小さいので、それらがより身近に感じられるといえる。特に、ブダペストに住んでいるなら、有名な歌劇歌手や俳優とよく同じトラムに乗り合わせたり、たまたま同じ医者に通っていたりする。ただし、ほとんどの人は作家と会っても、顔を知らないために、気づかないと思う。学校の教師や親にもブック・ウィークのようなイベントのポスターに気づいて欲しい。子供たちに読書が好きになるチャンスを与えよう!
(ケレケシュ・ジュジャ)
 
 

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