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ヴェ スプレーム「日本の日」を終えて
森田 友子

 
 5月末、 ヴェスプレーム県ハンガリー日本友好協会の第2回「日本の日」が開催された。今回は、パンノン大学、ヴェスプレーム市、在ハンガリー日本商工会の支援を受 けて実施された。様々な日本文化が紹介され、2日間で約2500人の訪問があった。事業内容は大使館H Pにも紹介されているが、この予算と人員で、よくできた、と思えるものだった。
  翌週の「カイゼン会」では今後の課題が話し合われ、こんな大仕事を、本当にまたやりたいのか?という意見も出たが、第3回が、2013年10月に予定され た。次回はあれもこれも取り入れるのではなく、テーマを絞った事業を考えている。

 この非営利団体は2年半前に設立され、ハンガリー日本友好協会の支部ではなく、独立した法人機関として登録 されている。在日暦10年以上の会長を初め、流暢に日本語を話せる研究留学経験者が数名いるおかげで、地に足のついた活動ができていると思う。
  協会の柱となって支えているのが、素人の域を超えた、盆栽、折り紙、着物、剣道等に関わる日本伝統文化マニアさんたち。でも、それぞれがまったく異なる専 門分野も持っているので、おもしろい。
  盆栽担当者は電気技術者で、普段は電気会社で働いている。だから、盆栽の枝を曲げる針金はゴム絶縁の電気ワイヤー。彼の運営する盆栽クラブは10年以上続 いていて、週末は機械油のついた手を拭って、新しい素材(植物)を探しに森に入るのが楽しみだそうだ。
  折り紙の芸術家は養護学校の先生。長時間じっとしているのが苦手なので、職員会議の時でもミニ折り紙を引き出しから取り出して、始終指を動かしているのだ とか。協会の集会でも、一瞬にして素敵な作品ができあがる。
  着物の女性は気象学者だから、着物の伝統についてもかなり掘り下げて研究していて、その為にわざわざ日本まで行っている。着物の講演や説明はまるで大学の 講義・論文のよう。もう一人の女性は服飾デザインの先生で、着物に対しては、コスチュームの視点から興味をもっている。着物の染色で日本留学を目指してい る。
  剣道担当の会員はヨーロッパチャンピオンになったこともある男女で、男性は日本の道場も巡って技を磨いている。先月のイタリアでの世界選手権大会では、彼 の率いる剣道クラブが男子団体戦で、日本、韓国に次ぐ3位に輝いた。女性のバービーさんは、モデルなみの長身で、協会のマスコット人形的存在。また、写真 が趣味なので、専属カメラマンでもある。

 
 
 これまで 既に5つ以上の事業や活動をこなしてきたが、イベント専門の団体でもないのにここまでやってこられたのは、愛日家で自分の意思で参加下さっている法律家、 様々な公式行事を担当した元県庁関係者のおかげだと思う。事業によっては、複雑な法的手配や計画準備が必要なこともあった。また、旅行社が会員である為、 運搬がとてもスムーズ。大使館や交流基金からは、多くの展示品をお借りすることができている。
  施設に関しては、大学関係者も多いので、これまで3回の事業で、パンノン大学からの協力を得ることができた。そして、ヴェスプレーム県と岐阜県が、古くか らの姉妹都市である為、これまでの国際交流の歴史が、活動をより豊かにしている。

 こんな機関の中で、私は唯一ホンモノの日本人である。だから、協会の一員として手伝う半面、監査役のような 気持ちを携えて参加している。中には、まだまだ遠い国ニッポン、う〜ん、ちょっとこれは、という内容もあった。ニッポンが好きで頑張っている人の夢を壊さ ないよう、ホンモノに近づけるのは、結構努力を要する。現実的に追求できる限度もあるから難しい。今回、「錦鯉」のコーナーが設けられたが、展示するに相 応しい本物を手配するのは至難の業であった。それでも、事業を盛大にとただひたすら牽引する会員と、何度も話し合い、使命感を持って踏ん張った甲斐はあっ たと思う。
  今後もすべてのメンバーが「誠意」を持って携わっていくのであれば、事業回数を重ねる毎に改善され、より大きな協会に成長していくと信じている。そして、 これこそが、まさに「日本」から学ぶべきことに思う。

 一方、ハンガリー人との共同作業で、彼らから学んだことも山ほどある。彼らの仕事の一番素晴らしいところ は、各自が本質を把握して活動しているところだと思う。本質を理解し自己判断して積極的に動くから、一々細かいことを決めなくても展開されていく。会長は 存在するけど、司令塔ではなく、予算以外の方針や方法は、殆ど皆、独自に決めていく。脱線すれば、ちょっとちょっとと誰かが必ず指摘するので、大抵は本来 の路線に戻る。だから、できあがる作品は、キチンとしていながらも、個性があっておもしろい。
  が、皆、それぞれに自己解釈し、勝手な方法、思惑でバラバラに動くので、それが災いすることも多々。そして、そんな仲間の行動は予測できないので、無駄手 間、勘違いが発生し、共同計画が難。最終結果の形も、最後まで細かいことははっきりしないので、リスク高。
  でも、コツさえ掴めてしまえば、一緒に仕事するのは、無限大に楽しめる。未知の可能性が埋まっているチーム、ヴェスプレーム県ハ日本友好協会、今後の活動 も大いに楽しみである。

(もりた・ともこ)
 
 

Web editorial office in Donau 4 Seasons.