一方、主
人の楽しみは、狩猟、チェス、サッカー、そして、タロック。いかにもヨーロッパならではの娯楽。この中でも、馴染みの薄いタロック(tarokk)は、日
本では、タロット占いで知られているが、ハンガリーでは、歴史あるカードゲームのこと。
15世紀前半にイタリアで発明され、ハンガリーには、二重帝国時代に広まった。カードゲームといっても、当時から、ギャンブルではなく、紳士の遊びとされ
ていて、現在でも、点数か1〜10Ftでプレイされている。昔、農村では、重要な地位にある人(役人、地主)や学識層(牧師、医師、林業技術士)が集ま
り、娯楽と社交、集会を兼ねたものだったという。確かに、主人のグループのメンバーも、医者、薬剤師、林業技術士が顔を連ねている。なぜ今でもこの専門家
たちが揃うのかというと、遊び方は、大学の先輩から伝授されるからだそうだ。
ルールはトリックテイキングで、パートナーを組んでプレイする。花札のような役があり、その役を予め宣言することもできる。かなり複雑なゲームだが、雰囲
気は、マージャンに似ている。主人たちは、5〜6人で、週に一度、夕方から夜中まで遊んでいる。各家庭を循環するので、我家にも、1ヶ月半に一度は順番が
周ってくる。夕方6時くらいから始め、夕食時以外は殆どおしゃべりもしないで、夜中12時まで真剣にカードをしている。これが20年以上続いているので、
余程好きなんだろう、と半ば感心する。地方や外国に住んでいて、帰省時には必ず参加するメンバーもいる。
ハンガリーでは、楽しみを大人だからとか、小さなこどもがいるから、といって我慢しなくてもいいように見え
る。間もなく始まるバカンス(Vakacio)も、こどもだけでなく、大人も随分楽しみにしているようだし、普段でも、こどもは預けて出かける、というの
が至極当然で、健全に生活するための息抜きが、社会的に大いに認められているような気がする。勤勉で働きモノの国から来たものとしては、違和感を覚えるこ
とも少なくないが、半分参考にしたいと思っている。
主人を見ていても、好きなモミの木を日々育て、日常の刺激になる鑑定の仕事をたまに受け、家のことやこどもの世話を程々にしながら、趣味にはたっぷりと時
間をかけている。タイムマネジメントが上手いのか、単にタフなのか、優先順位が違うのか?その横で、ただ指をくわえて見ているのも癪なので、私も見習っ
て、長年諦めていた乗馬だけは、たまの楽しみにすることにした。日本から離れてできなくなってしまったことを悲しむのではなく、ここだからできることに焦
点を当てて、ハンガリー生活を楽しみたいと思う。
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