〜強い!アメリカ
勢・・・日本は惨敗〜
世界選手権が始まる前、アメリカ合衆国世界選手権チームのインターネットサイトBalloonPongでは、このように各国を評価していました。
The usual power nations of Germany,France, Great Britain, andthe
United States have a longhistory of good performancesat the World
Championships.Many teams are keeping an eyeat some of the new nations
onthe international scene. Japan issending seven pilots to this
year,while Brazil, Sweden, and Spainare each sending five.
今回の世界選手権では、従来から行われているゴールに向かって正確に飛ぶ競技と、近年始まった3Dタスクと呼ばれる競技が行われました。3Dタスクとは、
各気球に搭載される航跡記録装置(GPSロガー)の結果から飛距離などを算出するものです。例えば、空中に三次元のエリアが設定され、その中をいかに長い
距離飛行するか・・・といった内容となり、より複雑で高度なフライトテクニックと、3Dタスクをこなすための情報分析力が必要となります。
日本国内では3Dタスクの競技が少ないため、日本人パイロットは3Dタスクに慣れていません。また、各国の気球や競技車両を見ると、GPSや高度計、無線
機は当然のこと、パソコン、動画カメラ、位置を知らせる発信機など、「熱気球」というノスタルジーさえ感じる外見とは異なり、ハイテクな機器が目白押しで
す。日本は、どちらかというと「高度計とGPSと無線機だけ」で競技をしている旧来型です。ゴールに向かって飛ぶ競技では、この方法でもパイロット個人の
「技」と「センス」の勝負で上位に食い込めます。今回のハンガリー世界選手権でも、ゴールに向かうタスクでは日本勢も悪くはないポイントを稼ぐことができ
ました。しかし、問題は3Dタスク。国としてチームを編成し、情報網を駆使する各国には到底及ばぬ結果となりました。
1位、2位はアメリカ合衆国、3位スイス、4位フランス、5位ドイツと強豪国がやはり上位を占めました。
日本勢は、16位、31位、42位、56位、69位、86位、105位。各パイロット、各チーム、がんばりました。しかし、パイロット個人のスキルで挑
む、今の日本の体制の限界かもしれません。
日本チームの大きな特徴は、各パイロットを中心とするチームごとに競技を行っており、競技上では日本チーム
全体の結束は弱いことです。世界選手権はあくまで各パイロットのテクニックを競うものであり、国同士の戦いではないとされます。しかし現実には、アメリ
カ、ドイツなど強豪各国は、国としてチームを編成し、システマチックに世界選手権に挑んできます。
今回、圧倒的な強さを見せたアメリカ合衆国は、6人のパイロットを送り込んできました。若いパイロットが多く、そのパイロットをベテランがサポートする形
でアメリカチーム全体が編成されています。アメリカチーム全体のチームマネージャー、その傘下に気象チーム、クルー、インターネットサイト
BalloonPongを使っての告知広報担当スタッフ、そしてスポンサー。「The U.S.
Team」は完全に組織として機能していました。アメリカチームの場合、トップパイロットをより上位に上げるために、しばしば他のパイロットが「風見」と
して先に飛びます。各パイロットは、自分が優勝したいという思いもさることながら、何より星条旗を揚げたいという気持ちを強く抱いているようです。
こうした性格は国によって異なりますが、日本チームは、出場パイロットの数は世界有数となってきたものの、優勝できないのには、このあたりに要因があるよ
うに感じます。特に近年3Dタスクのような新しい競技が増えたことは、組織力がモノを言います。他にも、熱気球は英語が公用語として進む競技のため、英語
のスキルも必要です。日本人らしい性格からくるコンプレックス、スポンサーが少ないこと、選手の職場環境、富裕層ではない一般人が選手である所以の経済的
事情なども、他国と比較しデメリットな点としてあげられるでしょうか。
次回、世界選手権は2012年。アメリカ合衆国で開催されます。日本は、今回の結果から、シード枠は3となっています。2000年代初頭は、熱気球競技の
世界トップクラスに入りつつあった日本も、今回の惨敗により急落してしまいました。
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