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パットの名手はパ ターを変えない
柿崎 広好

 

 昨年11月29日よりハンガリーに駐在となり、迷わずハンガリー日本人ゴルフ部に入部。春の訪れと共にハン ガリーでのゴルフがスタートしました。ホームコースは「パンノニアGC」。ハンガリー屈指の難コースです。日本のゴルフ場との大きな違いは、とにかく速い 「高速グリーン」だと思います。日本のゴルフ場の感覚でプレーをすれば、平均パット数が3打〜4打違うのではないでしょうか?

 

 パットが入らない理由は大きく分けて二つあります。一つ目はラインの読み違い。例えば左に曲がると思って カップの右を狙って打ったが、逆に右に曲がった。これはどんなにうまく打っても入りません。そもそも入るはずがない所に向かって打っているのですから。も う一つはミスパット。8mの距離を6mしか打てなかったり、カップの右を狙って打ったつもりが左に引っ掛けたりと言うケース。頭のミス(読み違い)と体の ミス(ストロークミス)と言えると思います。私の場合はまだまだ未熟なので、この二つが共存しています。読みが悪い上に、狙ったところに打てない。そこ で、まずはこのパンノニアGCの高速グリーンに合うパターを見つけ出そうと思い自分が日本から持って来た数パターを試してみることにしました。まずは日本 で主に使っていたエースパターのベティナルディMC−7。ゴルフショップの店員に「良いパターは手の平の上でバランスさせた時にフェース面が真上を向きま す。フェースバランスと言うですが、これができているパターは少し芯を外してもミスを救ってくれます。このMC−7はピンタイプのヘッドをロングネックに してフェースバランスをとっています」と言われ5万円以上も出して買ったパター(この値段は奥さんには内緒です)。皆さんも一度、自分のパターで試してく ださい。フェースがスッ−と真上を向きますか?あれー上を向かない?ご心配なく。あのジャンボ尾崎プロ使用のL型パターも上を向きません。

 

 最初はこのエースパターをバックに入れてパンノニアグリーンとの対決です。練習グリーンで試してかなりの高 速グリーンとわかっていたので、距離感はまあまあ。しかしショートパットを外してばかり。パンノニアの高速グリーンの前に3パットの連続。女子プロの宮里 藍ちゃんが一時ショートパットの方向性を出すためにクロスハンドにしていた事を思い出し、クロスハンドも試してみましたがうまく行かない。ついにご主人様 に嫌われ交代。次の出番は長さ46インチの長尺パター。オデッセイホワイトホット。もちろんフェースバランスとれています。その上、センターシャフトと 言ってパターヘッドのほぼ真ん中にシャフトが刺さっている。通常パターのシャフトは手前側に刺してあり、先端側でボールを打った場合はフェースが開く気が するのですが、このセンターシャフトはその心配がない。方向性に対してはMC−7と比較して絶対的なアドバンテージがあります(あるはずです)。長尺パ ターは胸のところで左手を握り、シャフトの真ん中辺りを右手で握ります。ストロークは、ほうきで掃くイメージに近く、左手が支点になって振り子のようにス トロークされるため、方向性抜群(のはず)です。「よし、これでパンノニアグリーンと勝負だ!」と期待に胸を膨らませて持ち込みました。ところが長尺は距 離感が出せない。ファーストパットが寄らない。結局3パットの連続。方向性は良いけど距離感が出せない。またしても短気なご主人様に嫌われ交代。

 

 次はパットの名手ブラッドファクソン使用の名器スコッティキャメロンのラグーナ。MC−7を買うまで長年使 用していた思い出のパター。「君ならきっと今の僕を助けてくれるよね。何しろ一番長い付き合いだからね」とパターに語りかけ、いざ出陣。しかし、結果は同 じ。寄らず、入らず。3パットの連続。もうどのパターを信じて良いのかわからなくなった。「これじゃパンノニアのグリーンに勝てない」と怒りに震えていた 時、「ん?待てよ。パットが入らないのはこれらのパターに問題があるからなのか?どのパターを使っても結果が同じと言うことはパターに問題はないのではな いか?そもそもパットが寄らない、入らない真因は何なのか?それがわかっていないのではないか?」。仕事では「真因を追求しろ!真因なくして対策なし」な んて言って指導しているが、自分が真因追究できていないのではないか?確かにパンノニアのグリーンは難しい。でも都合よくパンノニアに合うパターなんて存 在するのか?そしてわかったのです。すべての問題は自分の腕の無さにあるということを。

 

 うまく行かない理由を道具の責任していた自分と決別して本当の対 策がスタート。不調の原因であるショートパット対策。「ショートパットは耳で聞け!」と言われる。これは結果(カップに入るか?入らないか?)を気にする あまり、打つ瞬間からカップの方に視線を向けてしまうために体が左へ開き、結果的に左へ引っ掛ける現象を防止するための言葉。カップインの音がするまで顔 を動かさない。体を開かない。球を追わない。これを肝に銘じて実践。頭が動かなくなった。体も正面のままでストロークできるようになった。

 

 もう一つ「ショートパットは反対側の壁に当たるくらい強く打 て!」と言われる。これはカップインしたボールを拾い上げる際、カップ周辺を何十人という人が踏んでボールをカップから取り出す。午後になればカップの周 りはへこんで来る。弱いとこのへこみの影響でカップからボールが逃げる。カップに嫌われる。だから影響を受けないように少し強目に打つ。「強めに打って入 らなかったら」と不安な気持ちを吹っ切り、自分を信じて強めに打って行く。これらを実践して行くにつれて少しずつ改善。やはり問題は自分自身にあった。

 

 ある雑誌にこんな記事が載っていた。「パットの名手はパターを変 えない」。時代を築いたパットの名手には名器と呼ばれるパターがあるそうです。私はベティナルディMC−7をパートナーとし、パンノニアの高速グリーンに 挑みます。もう浮気はしません。最後は精神力を含めた自分の技量なのですから!最後まで読まれた方、あなたもきっとパットがうまくなりますよ!

(かきざき・ひろよし マジャール・スズキ)
 
 

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