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放射線治療の研修へ
ハンガリー国立がん研究所
秋山 広徳


 
 

 2016年9月から1年間の予定でブダペストに滞在し、XII区にありますOrszágos Onkológiai Intézet(英名: National Institute of Oncology、以下Intézet)に受け入れていただいております。主に舌、頬、唇などにできた癌の放射線治療について診療、教育方法、研究を研修しております。こちらに滞在し半年程経過いたしました。これまでを振り返らせていただきます。

留学決定
 2014年4月に初めてブダペストを訪れました。ウィーンで開催された欧州放射線腫瘍学会への参加がきっかけでした。その際に、指導医の先生のご縁によりブダペストを訪れる機会をいただき、Intézetを見学させていただきました。滞在は3日間でしたが、Intézetの先生方のご配慮により大変充実した時間を過ごしました。特に、日本では手術されることが多い舌、頬、唇などにできた癌に対して、放射線治療が活発になされており非常に印象に残りました。帰国後、勤務先から留学の機会を得ることができ、IntézetのProfessor へ留学の可否を打診いたしました。そして2015年4月に許可を得ることができました。

留学準備
 海外長期滞在の経験が無く、準備期間中は多くの人のお話を伺いました。重要なのは査証および滞在許可証の取得、住居およびネット環境と理解しました。査証取得に関しては、大使館の方に大変お世話になりました。また、現地での滞在許可証取得、住居選定およびネット環境整備には、現地の方に大変ご尽力いただき、日用品買い出しもお手伝いいただきました。留学初日には、勤務先の先生にご紹介いただきました通訳の方に空港までアテンドしていただき、無事滞在先に到着することができました。準備期間中の反省点としましては、ハンガリー語をまったく学習しなかったことです。現地に参りまして痛感いたしました。

研修内容
 癌治療で放射線治療を選択する患者さんは日本と比較し欧米では倍以上いらっしゃいます。Intézetでは、自分の専門であります舌、頬、唇などにできた癌の放射線治療が活発になされております。これらは手術でも治療されますが、見た目や機能が大きく損なわれることがあります。そのため、放射線治療の果たす役割は非常に大きいと考えられます。研修内容は、診療、教育方法および研究です。
 診療では、診察や手術の見学および介助をさせていただいております。Intézetの先生方は、英語、独語を話されます。自分に対しては英語を使っていただけるので大変助かっております。しかし、患者さんにはハンガリー語で会話されます。患者さんの中には英語を話されるか方もいらっしゃいますが、体の不調などの細かいニュアンスなどは、英語ではやはり伝えにくいと思われます。また、ハンガリー語のほうが気持ちが落ち着くと思われます。自分もハンガリー語の習得に努めてはいますが、難しいと感じております。日本にいる間にある程度は習得しておくべきであったと反省しております。
 IntézetはSemmelweis UniversityのDepartment of Oncologyも兼ねています。そのため学生さんの教育および実習が行われており、その見学をさせていただいております。その際、先生方の学生さんへの接し方や講義方法などを身に付けたいと考えております。
 Intézetの先生方は、非常に多忙な診療および学生教育に加え、その成果をactiveに研究・発表されております。その先生方のご指導で自分も研究の一部に関わらせていただいております。その成果を2017年5月に行われます、Hungarian Society for Radiation Oncologyで発表させていただきます。また、発表内容をさらに深めまして、論文として公表させていただく予定でございます。

生活
 少しでもハンガリー語を習得すべく、毎週1回、通訳の方からレッスンを受けております。また、コンサートなどのイベントにも参加を心がけております。日常生活は、温かいハンガリーの方のご厚意により問題なく過ごせております。
 こちらに参りまして、自分の生活を振り返ることが多くなりました。人との出会い、ご縁が大切であると改めて感じております。数年前までは、自分がブダペストで1年過ごすことになるとは夢にも思っていませんでした。日本で御指導いただいております先生方との出会いがあったお蔭で、それが実現しました。また、ハンガリーでは、Intézetの先生方をはじめ多くかたのご縁をいただき、無事に楽しく毎日を過ごしております。自分を支えていただいております、すべての方へ感謝を申し上げ、その出会い、ご縁を実らせるために残りの研修生活に全力を尽くしたいと考えております。また、帰国後は当地で学ばせていただきましたことを日本の方に伝えるとともに、ご縁があり、ハンガリーへの留学を希望される方のお手伝いが少しでもできればと考えております。 縁あってハンガリーに滞在していますことを心より嬉しく、また誇りに思います。

 


(あきやま・ひろのり ハンガリー国立がん研究所)
 
 

Web editorial office in Donau 4 Seasons.