Topに戻る
 

 
 
 
     
 
日本人学校補習校その他日本語教 育
 
     
 
 
 
日本語広場|子供と遊ぶボランティ ア「日本語広場」
栗田 順子

 
 ハンガリーに嫁いで13年。3人の子供に恵まれ、育児歴は11 年。そんな私が友人と細々と続けているボランティアがあります。それは、「日本語広場」と称する、親子で日本文化に親しむためのクラブ活動です。
  日本語広場は、みどりの丘補習校と同じ校舎内の一室で、月に2回、幼児サークル終了後、11時15分から12時30分、活動しています。第一部はわらべ歌 とリトミック、第二部は紙芝居、そして第三部は、親子工作教室の3部構成になっています。四季折々、日本の文化に触れながら、親子で一緒に遊ぶことを目的 としています。私達がしているボランティアとは、具体的に書いてしまうと、いろいろあるのですが、大まかに言うと、その企画、準備、そして、開催日の進行 役です。
  このボランティアを始めたのは、遡ること、長女が補習校に入学した4年前の秋。娘が入学してから、毎週土曜日の朝は、補習校に通うため、時にはイライラし ながら慌しく支度をし、家を出発。田舎町からブダペストまでの片道30km以上の道のりを送り迎えすることになりました。送り迎えのための自宅とブダペス ト2区の2往復は、あまりにも時間とコストがかかることから、補習校が終わるまでの娘の待ち時間を如何に有意義に過ごすかを考えた末、私と友人は、夫達の 応援に背中を押され、2009年10月、この日本語広場を創設しました。
  このボランティアを始めたことで、この日本語広場にはメリットがあることに気づきました。一つは、子供達にとって補習校入学前の準備期間になっているとい う点です。みどりの丘補習校と同じ校舎での活動しているため、幼児サークルや日本語広場に通っている子供達はみどりの丘補習校に通っている児童、生徒さん との休み時間に交流を持つことで先輩と知り合い、補習校の雰囲気にも慣れることができます。そして、入学前から同級生のお友達もでき、一緒に補習校入学へ の心の準備ができます。
 
 
 
 二つ目は、遊びの可能性が広がる点です。専業主婦の方も、お仕 事されている方も、平日は、子供の送り迎え、夕方は家事に追われ、子供と一緒に遊ぶ時間も遊びの種類も限られてしまいがちです。広場では、わが子と日本語 で一緒に遊べるだけでなく、お友達と一緒に遊ぶことで、遊べる種類が何倍に広がります。例えば、「とおりゃんせ」や「はないちもんめ」は親子だけではでき る遊びではありませんが、広場でお友達と一緒なら遊べます。
  どのような活動をしているか、一部紹介します。導入では、出席確認。子供の数と大人の数を一緒に大きな声で
数えて、ちょっとした足し算を一緒にします。それから、新しいお友達紹介をし、新しく参加したお友達の紹介と
自己紹介の歌を歌い、みんなで、一人ずつのお名前を読んであげます。名前を呼ばれた子はお返事をするのですが、いつも子供達は動物と化し、猫や豚になった り、時には、恐竜になった気分でお返事をしてくれます。
  第一部のわらべ歌の時間では「かごめかごめ」、「はないちもんめ」、「とおりゃんせ」、手遊びでは親子やお友達同士で組になって一緒に遊びます。時には、 体を使って踊ることもします。いろいろやってきた中で、子供達の一番人気は「あぶくたった」です。どの子も、鬼になりたくて、いつも鬼は一人でなく2〜3 人の複数。[とんとんとん]「何の音?」に続く子供達の想像豊かなさまざまな音は、かわいらしかったり、奇想天外であったりして、お父さん、お母さんを大 いに笑わせてくれます。
  第二部の紙芝居は子供達が一番大好きな時間。紙芝居が始まる前に必ず、「始まるよったらはじまるよ」の歌を歌い、子供達は両手をひざに置き、紙芝居が始ま ります。手がおひざにあるのはほんの一瞬ですが、紙芝居を聞いている間、子供達は静かに椅子に座り、まだ小さい子はお母さんに抱っこしてもらいながら、紙 芝居に穴が開くのではないかと思われるほど、紙芝居をじっくり見て、お話しの世界に入り込んでくれます。たいてい二つ、三つ読んであげるのですが、子供達 にとっては物足りないようです。
  そして、第三部の親子工作教室。この工作教室では、日本の四季、文化行事関連のものを作るため、一年を通して、毎回作るものが違い、バリエーションに富ん でいます。2月なら節分。鬼のお面作り、豆まきもします。3月には折り紙でお雛様を作り。4月はお花見のダンゴ作り。調理室を借りて、親子お料理教室でお 団子作りをしたこともあります。5月はこどもの日。こいのぼり作りや兜作りです。今まで、心の残っているのは、五月晴れのさわやかな日、校庭に大きな模造 紙を広げ、子供達に手に絵の具をべったりつけ、巨大こいのぼりを一つ作りました。4年間続けていると流石にネタ切れになることもあり、インターネットでい ろいろ調べることも多々あります。そんなときに、NHKの番組から、お父さん(お母さん)スイッチを一緒に作り、親子発表会をしたことは楽しい思い出の一 つとなっています。
  2014年3月、末の子が幼稚園を卒園し、4月にみどりの丘補習校に入学します。そろそろ、このボランティアもバトンタッチする時期が近づきつつありま す。
  保母の資格を持っているわけでもなく、先輩もいなければ、マニュアルがあるわけでもなく、ゼロからのスタートでしたが、この4年間のボランティア活動を続 けられたのは、私自身、無理せず、ストレスをためず、楽しんでいたこともありますが、何よりも参加者がいてくださったおかげであると思っています。当たり 前のことですが、参加者なくして、クラブは成り立ちません。土曜日で休みたい日でも、子供達と一緒に遊ぶために足を運んでくださる方がいてくれるからこ そ、続けてくることができました。紙芝居をもっと読んで!とおねだりしてくれる子供達、親子が一緒に工作し、完成した時の達成感、出来上がった物を高く掲 げ「これ見て!」と満足げに作品を見せてくれる子供達。日本語広場には、楽しい時間を共有できる仲間と出会えるクラブあると思っています。
  日本語広場参加者はとても国際的な親子が多く、日本人、ハンガリー人だけではありません。国境、世代を超え、とてもバラエティーに富んでいます。外国で暮 らしているゆえ、日本文化に触れる機会が限られた環境の中で育った子供達が、この日本語広場で、親子で一緒に何かを作ったという思い出が心の糧となり、健 やかに成長し、お友達と一緒に遊んだ手遊びや一緒に歌ったわらべ歌を、将来、次の世代へわらべ歌を伝承てくれたらいいな・・・と願っています。
(くりた・じゅんこ)
 
 
 

Web editorial office in Donau 4 Seasons.