7月10日に2年目を迎えた在留邦人向けマガジン『ドナウの四季』のホームコンサートを兼ねたパーティーが行われました。会場となったのは、このマガジンの編集長でもある盛田さんの事務所。事務所といってもブダ側の丘に面していて、ベランダから見る風景はブダペストのパノラマ絶景。白で統一されている会場にもなった広いリビングは、まるでキャンパスに描かれた絵のように絶景を引き立たせるものでした。そんな絶景を背景に、素晴らしいコンサートプログラム、そしてゲストの皆さんで持ち寄った美味しいお料理で目・耳・舌で大いに、そして贅沢に楽しませて頂きました。

 コンサートは2部構成になっていて前半はリスト音楽院留学生やハンガリー在住の音楽家達が、日ごろから耳にした事のあるような曲を披露してくれました。ソロピアノ、4手ピアノ連弾、オーボエ、ヴァイオリン、フルート2重奏とヴァリエーションに飛んでいて華やかでした。後半は、ハンガリー国立オーケストラのメンバーであるヴァイオリン奏者とチェロ奏者、そして歌の2人加わって更に本格的なレベルの高い演奏が聴けました。演奏者のそれぞれが楽しんで演奏されているので、聴いているこちらもリラックスして奏でられる素敵な音へ引き込まれていきました。最後はみんなで「夏の思い出」を全員合唱しました。ハンガリー人ゲストも一緒に歌えますよう、日本語の歌詞をハンガリー語のアルファベットで読めるようにプログラムに載せてあったので、ハンガリー人もそのハンガリー語表記を見ながら歌ってくれていて、それを聴いた時は「ここにもハンガリー人と通じ合えるものがあるなぁ」と嬉しくなりました。

 コンサートの後は演奏家も、いらっしゃってくださったゲストの皆さん、そして関係者全員で持ち寄った美味しいお食事をいただきました。並べられていたのは日本のお料理もハンガリー料理もあり、嬉しいことにデザートにケーキやクッキーなども揃っていって、日頃このような豪華なご飯にありつける事もありませんので、たくさん頂くことができましたし、帰りにはお土産にとお持ち帰りまで頂いて帰りました。普段お会いしない方々ともお話もできまして、本当に貴重な一瞬を過ごすことができました。
 今回コンサート出演者を留学生や演奏家の方に声をかけさせていただいたのですが、なかなか人前で演奏する機会が持てないので、こういった場面で機会を頂けるのは演奏家にとってやりがいもあるし光栄な事です。次回のコンサートにブダペスト在住の皆さんのご来場をお待ちしています。良いコンサートになりますよう幅広く演奏家の方々に声をかけさせていただきます(桑名一恵)。

ホームコンサート出演者から一言

町田 百合絵さん(ピアノ)
 ブダペストを一望出来る素敵な大豪邸でのコンサート、音楽家なら誰もが羨むことだと思います。ホームコンサートならではのお客様との一体感を感じ緊張しつつも、とても楽しく演奏させて頂き、他の様々なアンサンブルを聴けた事も良い勉強になりました。そしてお楽しみ!演奏会後の豪華なお食事会。美しい夜景を楽しみながら、皆さんが持ち寄った美味しい和食、ハンガリー料理、デザート、お酒をいただき、至福のときを過ごさせて頂きました。その際に、お客さんと沢山お話出来た事も貴重な機会でした。ハンガリーでの本当に素敵な思い出をどうも有難うございました。

岩瀬 桐子さん(フルート)
 私は初めて盛田さんの事務所にお伺いしましたが、バルコニーからのとても素晴「ドナウの四季」ホームコンサートらしい眺めに感激しました。コンサートがあったお部屋も、一段高くなったステージと客席とにうまく分けることができ、サロンコンサートにはもってこいのところで、ここが事務所だなんて・・と驚きました。
 私が演奏させていただいたコンサートは、いろいろな楽器の演奏者が参加し、そして、演奏された曲もヴァリエーション豊かで楽しんで聞けるものでした。また、お客様がとてもあたたかく聞いてくださったので、アットホームな雰囲気の素敵なコンサートになったと思います。また機会がありましたら、ぜひ参加させていただけたら嬉しいです。

松永 みなみさん(ピアノ)
 先日は大変お世話になりありがとうございました。なんといってもやはり、あそこからのブダペストの眺めが忘れられません。あんなに素敵な場所で演奏させていただけたこと、そしてリハーサルの時にいただいたお弁当をはじめ、当日もとてもおいしいお食事をあの場所でいただけたこと、本当に嬉しく思っています。聴いて下さった皆さんも、とてもあたたかい方たちばかりで弾いていてとても楽しかったです。ありがとうございました。

珠玖 加奈子さん(フルート)
 今回、演奏させて頂いたことに大変感謝しています。私たち音楽家は、日々自己向上のため努力し続けていますが、本来の目的である、人前で演奏する機会は、その練習量に比べ、大変少ないものです。時間にしてみますと、年間、何百時間、いや、何千時間の練習に対して、ステージでの演奏ははたして、どのくらいあるのか???そして、その1回の短い本番の中で、それまで準備したことを花咲かせなくてはいけません。たまには絶望の淵に立たされることもあります。コンサートは体験や、練習をする場ではありませんが、しかし、練習を積んでも積んでも、ステージでしか得ることのできない体験が、どんなに大きいことか。今回のような、機会は私共にとって大変ありがたく、これで又一つ大きく成長することができました。今回、岩瀬桐子さん、森京子さんと共演させて頂き、本当に嬉しかったです。音楽の喜びを分かち合え、大変幸せでした。人生の貴重な時間、私共の音楽を聞いて頂いた方々に心から感謝しています。温かい拍手を頂く時、これからも頑張って行こう!と元気づけられます。会場の事務所、素晴らしかったです。眺めも最高、そして、皆さんの作ってこられた手作りのお料理、本当に美味しかったです。演奏後のパーティーは、格別です。ちなみに、我が家は、私の練習の間、主人が一生懸命作って参上しました!すべてにおいて、大変、楽しい会でした。ありがとうございました。

香川真澄さん( ピアノ)
 7月の晴れ渡る青空の中、素敵なホームコンサートに出演させて頂きました。ため息の出るような素敵な会場とブダペストの美しい景色を目にしながら演奏出来たことは「幸せ」の一言です。今回はヴァイオリンとピアノで日本歌曲「浜辺の歌」とアルゼンチンの熱いリズムを感じる「リベルタンゴ」に挑戦しました。想像以上に、浜辺の歌の持つ穏やかな美しさや、情熱的なタンゴの世界を表現することに苦戦しましたが、試行錯誤する中で改めて曲の良さを知ることが出来たのも非常に良い経験でしたし、これからも沢山の曲に出会い、少しでも多くの方々に楽しんで頂けるような演奏を目指したいと思います。今回、このような機会を頂けたことに心から感謝しております。

坂井圭子さん(ソプラノ)
 以前歌ったモーツァルトのオペラ「コシ・ファン・トゥッテ」よりフィオルデリージのアリア「岩のように動かず」を選曲した。毎日仕事をしているため、なかなか練習時間がとれない。昔の記憶をたどりながら、硬くなっている身体と喉のウォーミングアップにだけは努めた。会場でのリハは2回。ピアノだけでなく、ヴァイオリンとチェロが伴奏してくれたので、音響やバランスに気をつけながら集中してやることに努めた。
 当日は、心地よい夏の一夜となった。立山研究所は、玄関を入ると天井まである窓の向こうに、まさにハンガリーの方々が望んでやまないパノラマが広がる。その景色たるもの、「圧巻!」としばし立ちすくんでしまうほどである。しかし、コンサートのお客さんを前に歌うと、その素晴らしい夜景は私の後ろに広がった。短い時間で仕上げなくてはならなかった本番ではあったが、弦楽器の音色に酔いながらアリアを歌いきることができた。
 次は、ぜひツィタデラの頂に立つ女神像に向かって歌ってみたいと思った。



前号の秋季号のホーム・コンサート記事の掲載に手違いがありました。ここに再掲して訂正いたします。なお、HPのPDF版は修正済みのものがアップロードされています(編集部)