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長内 裕美
Ferenc Feher Dance Company

 
  「何でハンガリーに行くの???」と留学前に、多くの友人から質問されました。その答えは「フェレンツ・フェヘールという振付家・ダンサーさんのもとでダンスを学びたかったから。国で選んだのではなくて、人で選んだら、たまたまハンガリーだったの」。
私が踊っている「コンテンポラリーダンス」というダンスは、主にフランス、ベルギー、スイス、オランダ、ドイツ等の国々で盛んです。到着してから知ったのですが、この分野でハンガリーに留学している日本人はなんと一人もいませんでした。ハンガリーでは、音楽やオペラ、バレエに比べて、コンテンポラリーダンスは盛んではありませんが、優れたダンスカンパニー(規模は他国に比べると小さいですが)、優れた振付家やダンサーさんがたくさんいることは事実です。
2年ほど前にフランスのアンジェにあるコンセルヴァトワールに短期留学していた際は、地方都市だというのに、劇場が3つ、ダンススタジオが9つも整えられていました。パリでは、数えきれないくらいの劇場とスタジオがあり、公演が毎日開催されています。
しかし、ここブダペストは、コンテンポラリーダンス専用の劇場は2つしかなく(演劇やライブとの共用劇場は多数あります)、その規模も小劇場ほどです。また、政府からの助成金の大幅カットの為に、無くなる劇場や、活動ができなくなるカンパニーもあるようです。
ブダペストに滞在してまだ2ヶ月ほどですが、フェレンツとのリハーサルは私にとって夢のような時間です。今は、TRAFOという劇場に付帯しているスタジオでリハーサルを行っています。リハーサルと同時に彼のメソッド、技術等も学んでいます。まだ先にはなりますが、彼とのデュエット(新作)を来年2013年4月にブダペストにあるAtriumという劇場で初演することが決まりました。
リハーサル以外には、10月に郊外の小さい村へダンスパフォーマンスをしに行きました。11月には16日間のインドのオフィシャルツアーにも同行しました。ニューデリー、デラデューン、最後はラジャスターンという砂漠でのパフォーマンス。たくさんの人々との出会いがあり、私は即興パフォーマンスに参加させていただきました。リハーサルだけでは得られない、信頼関係を築くいい機会となり、一生忘れられない思い出となりました。というのも、一見クールに見えるフェレンツは、とても動物好きで、まるで子どものような人柄だったという一面もあったのです。
フェレンツとの出会いは2010年春、韓国でのダンスフェスティバルで、私が彼の作品を観たのが初めてでした。私は韓国のダンスカンパニーで作品を踊っていました。初めて彼の作品を観た時、電気ショックを受けたような衝撃が身体を走りました。アクロバティック、かつ俊敏な動きをする一方で、身体の全先端まで神経を行き渡らせ、小刻みに震えたかと思えば、一瞬にして静止し、関節部分のみを動かしています。これまでに見たことの無い作品で、コミカルでありながら、人間の身体表現力の奥深さ、作品に対する追求心の深さに大きな衝撃を受けました。
その後、同年の秋、スペインのカナリア諸島で開催されたコンペティションで再会し、初めて彼と話す機会がありました。フランスに帰国後も、ずっとフェレンツのことが気になっていて、文化庁の在外研修制度で受入れてもらえないか聞いたところ、彼からすぐに承諾を得ることが出来ました。文化庁から承認を得ることができるまでにかなり待ちましたが、その分、今、たくさんのことを経験し、感じたことを吸収したいと思っています。もちろん、ブダペストという街も大好きですし、今、多くの方から助けていただいていることにもとても感謝しております。
日本では、アーティストとしての活動の他に、都立総合芸術高校の特別非常勤講師として働き、「子どもの城」にて子どもを対象としたダンスワークショップを行う機会をいただいていました。今、日本人として自信を持って創作していくこと、区別、選択して行くことが大切だと痛感し、次のステップへ行くためにも揺るぎない何かを得たいと強く思っています。1年という短い期間ですが、フェレンツが確立した振付・創作方法、根本的思想をより深く探求、考察する事によってその技術や思想を吸収し、今一度ダンス・表現・肉体とは何かを考え、今後、振付家・ダンサー、指導者としての活動に役立てていきたいと思います。
(ながうち・ひろみ)
 
 

Web editorial office in Donau 4 Seasons.