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浪漫譚
岡橋 熱典 (セント・イシュトバン大学獣医学部)

 
 幼少の頃より国外へ飛び出し、既に人生の半分以上をいろいろな国で過ごしてきました。最初はニュージーランドから始まり、中国、アメリカ、そしてハンガリーへ。過ごした国それぞれに特徴があり、一概にどの国が優れていてどの国が劣っているとは言えません。文化・言語・人々の価値観など全てが異なり、国として歩んできた歴史も違います。いきなりそのような環境に身を置き、生活する事は容易いことではありません。特に留学生にとって、教育システムの違いは学業を進める中で悩む原因の大きな要素になり得ます。ことわざには「郷に入れば郷に従え」と言う言葉がありますが、現実はそんなあまいものではありません。文化の違いで納得のいかない事、言語の違いで上手く思いを伝えられない事、価値観の違いで気持ちが落ち込む事、など多々あります。それなりの覚悟と決断力が無い限り、長い留学生活を乗り切るのは難しいです。それを成功させる為には、どれだけ自分の夢や目標に強い意志を持っているかが重要な要素です。
  現在は獣医学部の最終学年で、国家試験を目前に控えるなか初心を忘れず頑張っています。初めての日本人としてこちらの獣医学部を卒業する予定です。ハンガリーの獣医学部は2011年の卒業生までは5年制で、以降の卒業生については5年半に変わりました。話をしていて経歴を話すと、最終的になぜハンガリーなのかをよく聞かれます。確かに獣医学部は多かれ少なかれほとんどの国にありますが、その人の環境や経済の事情などで選択肢が限られてしまいます。私の場合はアメリカの大学にいた頃、学部の掲示板でたまたま募集要項を見つけたのがきっかけでした。留学生にとってアメリカの医学部や獣医学部などのprofessionalschoolに入るのは至難で、どれだけ成績が良くて金銭的な余裕があったとしても確実に入れるとは限りません。何故なら地域貢献やボランティアなどの要素も考慮されるからです。そんななかで卒業後の進路を、不確実なアメリカの獣医学部か確実なハンガリーの獣医学部かを考えると直ぐに答えは出ました。どこで獣医師になるか、ではなくどんな獣医師になるかという考えが進路を決める上で重要だったからです。事実ハンガリーの獣医学部の教育環境はアメリカや西欧と比べると良いとは言えませんが、自身の努力次第で腕を上げていくことは出来ます。ハンガリーの獣医学部はその可能性を与えてくれました。
  「獣医さん」と聞くと、どの様な印象を持たれるでしょうか。一般的に想像されるのは、町の動物病院で飼い主さんが連れてこられる動物を治療する先生だと思います。確かにほとんどの「獣医さん」は大学を卒業後、しばらく町の開業医の元で働いてから自分でも開業する方が圧倒的に多いです。しかし臨床医として治療するのは犬・猫などの小動物だけではなく、牛・豚・鶏などの畜産動物、鳥・爬虫類などのエキゾティック動物、更には野生動物にまで至ります。人間とは違い、種類も多彩な動物はそれぞれ専門的な知識を必要とします。又、臨床医として実際に治療する以外にも、屠殺所・保健所・検疫所・食品衛生管理・薬品開発・獣医師法制定など様々な分野に「獣医さん」は関わっています。
  こちらでの生活はなに不自由なく過ごせています。同じように様々な分野からハンガリーに留学生として来られている方や、こちらに住んでおられる方にお世話になり、励まされ、助けられています。そのことを日々感謝し、これからも精進していきたいと思います。
  今後どのような分野に進むか決めてない人や、既にその途中の人にも心の隅に留めておいて頂ければ幸いです。
  人生は浪漫であり、目的地に到達するまでの過程に物語がある。
  しかし目的地は終着点ではなく、そこから更に先への序章にしか過ぎない。
  振り返った時、壮大な物語が描かれているような人生を歩んで欲しい。
引用:祖父の言葉
 
 

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