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第19回大吉杯マッチプレー決勝戦立会人観戦記
渡辺 彰


 ゴルフ競技は通常スコアの合計を競うが、他にも色々な競い方がある。その一つにマッチプレーがある。小生はハンガリーに来て初めてマッチプレーを経験したが、なかなか心理的な駆け引きが絡んで面白いと感じている。日本人プロも世界マッチプレー選手権で優勝したことがあるのをご存知だろうか。あの青木功が英国の名門コース、ウェントワースでなんと優勝したのである。彼は賞金と共にウェントワースの中にある家を一軒、貰ったと記憶している。1978年のことなので若い方はあまりご存じないかもしれないが、この優勝で一躍「世界の青木」になった。彼は日本プロゴルフマッチプレー選手権でも何度も優勝しており、「マッチプレーの鬼」と言われ、勝負強いことを証明している。
 さて、歴史ある大吉杯マッチプレー選手権は春と秋の年2回開催されるが、第19回は日本人ゴルフ部のゴルフ狂27名が参加し夏場から一回戦を闘い初め、熱戦が繰り広げられた。ストロークプレーでは1ホールで大叩きをするとなかなか勝てないが、マッチプレーは1ホールごとで勝ち負けを決めるので大叩きをしても諦めずに頑張れば勝てるチャンスがある。この大吉杯の決勝戦だけは立会人がつくのが慣例となっており、今回は私が幹事ということで立ち会った。
  決勝に駒を進めたのは冠スポンサーの大吉店主飯尾欽哉さんと前回準優勝の竹内寿志さんで、2013年10月26日土曜日ゴルフ日和の中、パンノニアゴルフクラブで熱戦が始まった。飯尾さんのハンディーキャップは13、竹内さんのハンディーキャップは17ということで、八掛けして3つのホールにハンディーが与えられた。
  1番ホールは分けたが、2番ホールでは飯尾さんが下りの7mパットを決めてナイスバーディー。3番ホールでは負けじと、竹内さんが寄せワンのパーで再びイーブンとして手に汗握る展開である。5番ロングホールでは竹内さんがパーオンして1アップ。更に7番ホールはハンディーが効いて竹内さんが勝ち2アップ。8番ショートでは飯尾さんが意地をみせて奪い返し、竹内さんの1アップ。前半最終の9番ホールはハンディーキャップ1ということで最も難しいホールだが、ハンディーが効いて引き分けとなった。竹内さんが1アップで一歩リードして前半戦は終了した。まだまだ勝負はどちらに転ぶかわからない状態である。
  後半戦は10番ホール・11番ホールと相譲らず引き分けたが、ここから飯尾さんの反撃が始まる。竹内さんは「後半は苦手なホールが多くていやなんですよ」とのコメントも飛び出し、心理作戦も飛び交う展開となった。
  飯尾さんは長いパー4の12番ホール、そして比較的短いパー4の13番ホールを連続で取り、逆に1アップとなった。そして、14番のロングホールも飯尾さんは好調を維持したが、思いもよらぬ4パットを叩きこのホールを引き分けてしまった。
  そして問題の15番ホールを迎える。飯尾さんは楽々とピンハイに2オンして2パットでパーを期待できる位置につけた。これに対して竹内さんは3オンでピンから12mのところにつけ、2パットでボギーとなりそうな情勢であった。竹内さんのラインはかなり難しいフックラインであったが、しっかりと読み切り打ったパットはいい転がりをしながらカップど真ん中から入った。竹内さんがねじ込んだパットである。マッチプレーは一打一打でお互いの心理に微妙な影響を与える。この竹内さんの予期せぬ(?)ワン・パットにより飯尾さんのチャンスは一転してピンチとなった。上からのパットはカップをすり抜けて行ってしまい、返しのパットも残念ながら入らず、なんとボギーになり、このホール竹内さんの勝利。これで再びイーブンである。後半苦手だったはずの竹内さんが急に元気づいた。
16番のロングホールは二人ともパーで分け、そして17番ホールの名物池越えショートホールも分けとなり、イーブンのまま、最終18番ホールに突入した。
 18番ホールは距離のあるパー4でしかもハンディーホールだから竹内さんが非常に有利である。飯尾さんは渾身のドライバーショットでフェアウェー左側の好位置まで運び、2オンを狙った。この第2打も素晴らしいショットでグリーンにオンしたが、フェアーウェーウッドだった為か、グリーンを少しばかりオーバーしてしまった。飯尾さんとしてはハンディーのことを考えると勝負せざるを得なかったわけだ。竹内さんは第3打でグリーンに乗せ、飯尾さんも第3打でグリーンに乗せたが、ハンディーがあるので飯尾さんは竹内さんより1打少ないスコアで上がらないと引き分けにならないという厳しい展開である。結局、それぞれ2パットでボギーとなり、スコアは同じであったが、ハンディーが効いて竹内さんが最終ホールを勝ち、1アップで勝負はついた。初のマッチプレーの王者となった竹内さんと過去何度も王者となっている飯尾さんの決勝戦はなかなかの名勝負であり、立会人としてお互いのプレーに敬意を表した次第である。
  また同日、三位決定戦も行われたが、こちらは18ホールでは勝負がつかず、サドンデスの延長戦となり、1番ホールで柿崎さんが槇平さんを下して第3位となった。こちらも決勝戦同様の好勝負であった。
  次回のマッチプレーに出場してみたいと思われる方は、まず日本人ゴルフ部に参加いただきハンディーを取得する必要がある。そのハンディーをマッチプレーでも使用するからである。日本人ゴルフ部は3月から11月まで毎月月例コンペを開催しているので、3月のコンペに参加頂ければ、春のマッチプレーには間に合う。次回も多くの参加者で歴史ある大吉杯マッチプレーを盛り上げたいものである。

(わたなべ・あきら 伊藤忠)
 
 

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