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ちょっとした疑問か ら始まった日本語との出会い
ELTE大学大学院 ネーメト・アニタ

 

 日本語を勉強し始めてから、数え切れないくらい「なんで日本語を選んだの?」という質問を受けました。それ は良い質問ですね… 答えは、たいてい「ええと、まあ、それはね…」と口ごもることになりました。
  高校生の時から日本文化・歴史などに興味を持っていましたが、日本語は難しすぎるから、私には絶対できないと思って、始めずに諦めていました。あの頃の私 を、今も恥ずかしく思います。
  数年後、職場での昼休みの時間、同僚がキッコーマン醤油のアニメ広告を見せてくれたとき、私は「えぇっ、何、これ?」と口をあんぐりと開けてモニターを眺 めたまま、不思議な気持ちに襲われました。ショックを受けたような感じでした。「日本人の考え方を知りたいなぁ!やっぱり日本語を勉強したいなぁ!」とい うわけで、勇気を奮い起こして、ついに仕事を辞めて、2008年9月、エルテ大学の日本学科で長い道を歩きはじめました。もちろん、理由はそれだけではあ りませんでしたが、今、省みると、無意義そうに見える以前の5年間の大学の勉強や4年間の仕事の後、やっと一生で一番胸を躍らせてくれる旅を始められたの は、その可愛いアニメを見たのがきっかけだったのです。
 大学で与えられた課題は、あの時ひらがなさえ知らなかった私にとって確かに厳しかったですが、先生達の優しさや熱意のおかげで、この素晴らしい世界にだ んだん深く飛び込んでいきました。これまでの3年間は、本当に夢みたいです。(本当にありがとう!)
  そして、今年BA(学士)コースを卒業し、修士課程に進みました。BA卒業論文の課題に選んだ日本、特に東北地方におけるシャーマニズムの現象の研究も続 けたいと思っています。ハンガリーではシャーマニズムに関する研究は大変進んでいて、モンゴル民族などのシャーマニズムについての文献はとても豊富です が、日本の民間宗教については、ハンガリー語で書かれたものはほとんどありません。その現象は、本当に複雑で面白いのに(私にとってだけかな?)。ですか ら、都市化の影響でシャーマンが日本から消えてしまう前に、本を書いたり現地調査をしたりする、というのが私の将来の夢の1つです。
  もう1つの夢は、翻訳家になることです。芥川龍之介の作品を翻訳してみた時、日本語の本当の美しさに気付きました。ハンガリー人が手に入れることができる 日本の文学作品は、たいてい英語から翻訳されています。でも、本来の文章と英語から翻訳したものとを比べると、後者では、幾多の細かい表現が、言語の美し さとともに、無くなってしまっていることがすぐわかります。日本の文学はあまりにも優美ですから、やっぱり日本語から翻訳しないともったいないと思いま す。 
  3月11日のことは、言葉にならないくらいつらかったです。「どうしても、何か手伝いたい!でも、ハンガリーから何ができるのか?ボランティアとして行っ ても、邪魔になるだけだし…」というように、何もできないと感じていました。もちろん、募金活動に関わったり、被災者のための色んなチャリティーイベント へ行ったりしましたが、それは、雀の涙です。やっぱり、足りません。
  ですから、福島県と岩手県の学生たちが「絆プロジェクト」でハンガリーに来ると聞いた時、その プログラムに参加したいと私が思ったのは当然でした。福島県と岩手県の子供たちは、たくさんのハンガリー人が日本のことを応援しようとしているのを感じた り、ハンガリーでいろいろな体験をしたり、仲間を作ったりできたら、新たな力で地元の人々にも勇気を与えることができるかもしれないと思いました。その2 週間は、あっという間でした。子供たちは最初の1、2日は恥ずかしそうにおどおど過ごしていましたが、それを乗り越えて、短期間で可能な限りたくさんのこ とを経験しました。ハンガリーの伝統的な活動(民踊、アーチェリー、おもちゃ作りなど)を体験したり、一生懸命ハンガリー語も勉強したりして、彼らの笑顔 や精力が、反対にボランティアの私たちの力になってしまいました。そんな可愛い子供たちと会えて、本当に嬉しいです。心の底から。
 あいにく、私はまだ日本に行ったことがありませんが、それでも、ハンガリーから遠く離れたこの国から、感謝を表せないほど多くの事を教えてもらいまし た。実は、今でも、日本語はその魔法的な秘密のすべてを、どんなに頼んでも私に見せてくれないと感じることがあります。でも、その秘密を分かるようになる ため、精一杯頑張ります。

 
 
(ネーメト・アニタ)
 
 

Web editorial office in Donau 4 Seasons.